裁量労働制とは働き方を労働者の裁量に委ね、時間外労働賃金を一定とするもので、それは極めて限定された専門的職種を対象とするものであるが、現状は長時間労働・過労死の温床となり、また職種を問わず蔓延しているのが実態である。
過労死、過労による疾病の労災認定は年々増加し、いまこの長時間残業の取り締まりと労働者の健康管理が喫緊の課題として解決が求められているのである。にもかかわらず、政府はこの裁量労働制の対象業務を拡大し、ホワイトカラー全般に拡げ、時間外労働の賃金を低く押さえて、長時間労働を野放しにしようというのである。これはかつて安倍第一次内閣の時に時間外労働の規制緩和としてホワイトカラーエグゼンプションとして導入を目論み、多くの反対によって頓挫したものを焼き直して再登場させようとしているのである。
安倍政権は経済財政諮問会議を復活させ、民間企業経営者を政府委員として取り込み、産業競争力会議や、規制改革会議を使って成長戦略の名の下に、大企業の国際競争力強化のための労働規制緩和、使い捨てへと突き進んでいるのである。
ところで時を同じくして、四月十六日、日本経団連は「労働者の活躍と企業の成長を促す労働法制」と題する提言を発表した。「企業が将来にわたり国内事業を継続できる環境をより確かなものとするため、労働規制の見直しを一気に実施する必要」としてこの裁量労働制やフレックス制など労働時間法制の改革を挙げ、わざわざ下線をつけて集団的労使自治を尊重する仕組みの環境整備を謳っている。これは労使協調で企業業績拡大を進めようというのである。
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