被ばく労働を考えるネットワーク設立集会 全労協新聞12月1日号 2面

被ばく労働を考えるネットワーク設立集会 全労協新聞12月1日号 2面



脱原発社会をめざす労働者

●被ばく労働を考えるネットワーク設立集会
  被ばく労働者が闘いのスタートラインに立った

十一月九日夕方、東京江東区亀戸文化センターで「被ばく労働を考えるネットワーク設立集会」が開催されました。大ホールに参加者があふれ、多数のマスコミも取材に来たことを見ても、この催しに対する労働者市民の関心の高さが解ります。

この集会は、去年の福島原発最悪の原子力災害により広範囲にばらまかれた放射能によって発生した「被ばく労働問題」に対し、さまざまな労働組合、市民活動家、個人がみずからの生活と安全をいかに守り、闘うのかという問題意識で一年あまり準備され、「新たな闘いのスタート」を切るために開かれました。

司会は東京労働安全センターの飯田勝泰さん。この集会全体の根深い問題提起とさまざまな立場の発言者と議論を仕切っていきました。まず被ばく労働を追ってきた写真家の樋口健二さん、元原発労働者で原発労働者の組合を作った斉藤征二さんとネットワーク呼びかけ人の二人のアピールに続き、福島現地の除染労働者の組合を組織し団体交渉をまさに当日行ってきたいわき自由労組の桂武さんが現地報告を行いました。「除染労働者はいいかげんな安全管理と低賃金で働いている」「環境省からゼネコン、下請け会社、全国からかき集められた労働者へと下に行くにつれピンハネされている」「省庁もハローワークも下請け会社も責任をなすり付けているが、多重下請け構造での不当な労働条件を許さない闘いを続ける」と決意を語った。

次に、神奈川労災職業病センターの川本浩二さんが問題提起を行いました。川本さんは「なぜ私達は福島原発事故以前に被ばく労働問題が社会問題として注目されなかったのか」「なぜ被ばく労働者は立ち上がったのか」「放射能を心配するのも、立派な被害ではないか」と、ともに考えようと呼びかけます。つまり被ばく労働はすぐには発症しないが、福島原発事故とその後の収束作業はすさまじい被ばくが労働者に押しつけられたからだ。これまで、十人程度の労災を勝ち取った労働者は、プライドと技術に自信がある人たちで、その後ろには無数の下請け労働者の犠牲があった。また被ばく線量の線引きが問題ではなく、メンタルヘルス問題としてもっと被害への補償を要求すべきだ。まさにこれまで現場労働者の相談や運動を支援してきたからこそ言える発言だと思いました。

質疑応答では、偽装請負を疑問に思い組合を作ったが、つぎつぎに労働条件が不利益変更され、所属企業ごと契約打ち切りされ、元請け企業に団交要求しても門前払いされている若い労働者の発言。

被ばく労働者の母親は、現場労働者の暴動がおこることを期待するくらいやりきれない思いだ。でも同じ立場の家族同士で連帯したいという発言。福島現地だけでなく、関東の清掃工場の下請け作業員の内部被ばく問題も今後深刻になるのではと言う発言。会場近くの堅川公園の野宿者からの、江東区当局の人権を無視した強制退去反対への支援の訴えがあり、原発と同じ行政による社会的弱者の切り捨てではないかという提起。等々、議論が活発に行われました。

集会の最後に行動提起として、全国日雇労働組合協議会の中村光男さんが「十一月二十五日にはいわき市で、被ばく、生活、健康などさまざまな問題についての、よろず相談会を開いていきます。また、現地事務所を建設して、現地の人々と実際に出会い、ともに行動していく場を作っていきましょう」という提起がされました。

被ばく労働問題をきっかけに、日本社会の何十年も置き去りにされてきたさまざまな問題が暴き出されています。この日の集会を皮切りに実際の行動を通じて、今度こそ変えていこうという、気概に満ちた集会だったと思います。

(古澤俊雄脱原発プロジェクト・東京東部労組)



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