最低賃金8 兵庫県弁護士会の会長声明

 


日本弁護士連合会
2011年6月16日 「最低賃金制度の運用に関する意見書
2009年7月16日 「最低賃金の引上げに関する会長声明


【会の決議や会長声明など】
2012.07.30 最低賃金の引き上げに関する会長声明」2012.7.26


最低賃金の引き上げに関する会長声明

1 . 2 0 0 8 年7 月に施行された改正最低賃金法は、最低賃金を定めるにあたっては労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護基準との整合性を求めている(9条3項)。この法改正を受けて、最低賃金は全国平均で、2008年においては、時給703円(前年比16円増)、2009年においては、時給713円(前年比10円増)、2010年においては、時給730円(前年比17円増)、2011年においては、時給737円(前年比7円増)と従来と比較し大幅な引き上げが継続的に行われてきた。兵庫県でも、2008年においては、時給712円(前年比15円増)、2009年においては時給721円(前年比9円増)、2010年においては時給734円(前年比13円増)、2011年においては時給739円(前年比5円増)と引き上げがなされてきた。

2 . ところが、中央最低賃金審議会が公表した生活保護水準との最新の乖離額によれば、兵庫県を含む1 1 都道府県において、なお生活保護基準を下回っていることが判明した。兵庫県では1 0 円の乖離があるとのことである。全国平均の時給7 3 7 円で1 日8 時間、月2 2 日間働いたとしても、月額給与は1 2 万9 7 1 2 円、年収1 5 5 万6 5 4 4 円にしかならない。日本の相対的貧困率は1 6 % ( 2 0 0 9 年) と過去最悪を記録しており、その要因の一つとして非正規労働者の割合が増えたことが指摘されている。家計をパート・派遣等の非正規雇用に依存する労働者が急増し、働いても働いても人間らしい生活ができない「ワーキングプア(働く貧困)」が社会問題となっている今日、最低賃金の引き上げは緊急の課題である。

3 . 本年7 月2 4 日に開催された中央最低賃金審議会目安に関する小委員会は、今年度の最低賃金の引き上げ額について、全国平均で時給7 4 4 円( 前年比7円増)とする目安を示すとともに、「逆転現象」が起きている11都道府県については、原則2 年以内に「逆転現象」を解消すべきとしたとのことである。兵庫県においては5 円~ 1 0 円の引き上げ幅が目安として示されており生活保護基準との「逆転」解消が図られない懸念が高まっている。今後、中央最低賃金審議会が示す目安に基づいて、各都道府県において地域別最低賃金が定められることとなる。長引く経済不況に加え、東日本大震災により中小零細事業者の経営が一段と苦しくなると見込まれることなどから最低賃金の引き上げには消極的な論調も見受けられる。また一部には生活保護基準を引き下げるべきとの本末転倒な議論すら伺われる。しかしながら、改正最低賃金法が定めた生活保護基準との整合性の確保は、国民の生存権保障に直結する緊急の要請であり、これを最低賃金を引き上げることによって実現することを求めた規定であることは明らかである。兵庫県を含め生活保護基準との「逆転」が生じている都道府県の解消は「原則2 年以内」ではなく直ちに実現されなければならない。兵庫県においては少なくとも1 0 円以上の引き上げがなされなければならない。そして、中小零細事業者の経営支援等の施策に配慮しつつも、人間らしく生活し働くことができるよう、更なる最低賃金の引き上げへ向けた努力を求める次第である。

2012年(平成24年)7月26日
兵庫県弁護士会
会長林晃史


2011.07.29 「最低賃金の引き上げに関する会長声明」
2010.08.09 「最低賃金の引き上げに関する会長声明」2010.8.6


 
(F)