JAL整理解雇撤回裁判で不当判決  全労協新聞 2012年5月号 3面

全労協新聞 2012年5月号 3面
 
 


●JAL整理解雇撤回闘争


 
JAL整理解雇撤回裁判で不当判決
整理解雇4要件の骨抜きで解雇を正当化
 
 
三月二十九日に東京地裁民事三六部(渡辺弘裁判長)で乗員判決が、三十日に民事十一部(白石哲裁判長)で客乗判決が出された。裁判所前で待機する原告や支援のメンバーから「どうして!」との怒りの声があがる不当判決、すぐさま裁判所に向けて怒りのシュプレヒコールをぶつけた。両日とも近くの会場で報告集会が行われ三五〇人を超える参加者であふれた。

判決は共に、整理解雇の四要件は会社更生計画下にあっても当然に適用されるとしたが、四要件に即した判断では更生計画で決まっているからと原告らが具体的に立証した事実に目をそむけ、四要件を厳しく判断するという姿勢を放棄した。まさに労働者の長年の闘いにより勝ち取ってきた整理解雇の四要件を反故にし、首切り自由の社会に道を開くものだ。

「会社の収益状況からいけば、だれが考えても雇用を続けることは不可能ではなかった」という稲盛証言について、乗員判決では言及せず、客乗判決では「苦渋の決断としてやむなく整理解雇を選択せざるを得なかったことに対する主観的心情を吐露したに過ぎない」と経営の責任を免罪した。こんな裁判官の判断を私たちは容認できない。乗員判決では、更生計画を上回る営業利益も(二年連続の大幅利益をあげている)「すべての雇用が失われることになる破綻的精算を回避」する更生計画から余剰の人件費に使うことは許されないと整理解雇を容認し、経営責任を労働者に転嫁することを正当化した。

安全最優先についても乗員判決は、年齢にかかわらず航空法令に基づきライセンスを受けて運航乗務についており、運航の安全確保に必要な知識や経験の多寡が年齢と相関関係にあるとは認められないと退けた。JALは頻発する不安全事例に四月十一日から特別安全キャンペーンを開始したが、ライセンスがあれば経験は関係ないというに等しい判断は、不安全事例をさらに拡大しかねない。

年齢による解雇基準についても、年齢が高いほど人件費の削減効果が大きく、定年までの貢献期間が短いから合理性がある(乗員)、再就職の機会は少ないが高齢者は賃金も高く退職給付も有利であり、子育ても終了し生計費がかさむとはいえない(客乗)として年齢基準を合理的とした。
 
支える会に参加を

この判断は年齢差別であるばかりか、三十歳定年・妊娠退職の撤廃、子どもを育てながら定年まで働くことを闘い取ってきた女性たちの働く権利を奪うものだ。同時に闘う組合に所属するが故に差別され管理職となっていないキャビンクルーユニオン組合員へ不当労働行為を放免するものだ。

原告たちは四月一日原告団総会で控訴を決め、二、三日のJAL本社前の座り込み行動にも取り組んだ。五日には四谷区民センターで解雇撤回・早期職場復帰を求める決起集会が開催され会場は参加者であふれた。憲法学者の奥平康弘さんは、これはもはや個人の問題ではなく社会の問題だと指摘、支える会代表世話人浅倉むつ子さんは、判決は矛盾しており学生のレポートなら落第だと批判された。闘いのビデオ上映、弁護団の判決解説、共産党山下議員、社民党福島議員の連帯挨拶、原告団の怒りと闘う決意表明がなされ、最後はスクラムを組んで"がんばろう"の歌声が響いた。

四月十一日にそれぞれ七一名の原告団で控訴手続きが行われた。原告団を職場に戻し、整理解雇四要件の骨抜きを許さず、女性が安心して働ける職場を求め、JAL闘争を支える会への参加を呼び掛ける。

(JAL闘争を支える会 柚木康子事務局長)
 


 
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