ILO一〇〇号条約違反で日本政府に勧告  全労協新聞 2012年3月号 3面

全労協新聞 2012年3月号 3面
 
 


全労協女性委員会
 
ILO一〇〇号条約違反で日本政府に勧告
 
 
二〇〇九年七月に昭和シェル労組など三組合により、三つの裁判判決がILO一〇〇号条約(同一報酬条約)に違反すると憲章二四条に基づく申立てが行われた。ILOは申立てを受理し、政労使の三者構成委員会を指名、日本政府に見解書の提出を求めて審理を行い、昨年十一月理事会で「結論と勧告」を確認、十二月下旬文書が当該組合に届いた。

ILOは、日本政府が労働基準法四条はILO一〇〇号条約の要請を充足しており、異なる仕事や雇用管理区分にあってもこれを適用して賃金格差を是正することができるという公式の回答をしているにもかかわらず、実際の司法救済や労働監督はそうした政府の姿勢をふまえたものとは言い難いと指摘している。

日本の男女間賃金格差は依然大きく、二〇一〇年は拡大に転じている。三組合と均等待遇アクション21は二月八日夕方参議院議員会館で「条約に沿った労基法四条の適用を!」と報告集会を行った。

集会はILO専門官でもあった石橋通宏参議院議員民主党)の挨拶を受け、当該から経過と思いが語られた。次いで浅倉むつ子さん(早大大学院教授)が、申立と政府見解を比較しながら、委員会の結論のポイントとして「労基法四条や均等法の規定は条約の履行にとって不十分である」、「裁判等でも職務・職種・雇用管理区分を超えて男女の労働の価値比較がされなくてはならない」と紹介。さらに職務分析・職務評価は日本の雇用管理になじまないと放置せず、紛争になった時に正しく労働の価値を評価できるシステムの整備が必要と独立専門家制度の構築など具体的な提案もされた。

三つの裁判を担当した中野麻美弁護士は、結論を受けて、法改正の前にできることとして、政府見解の労働基準法四条の適用は、男女間に生じた賃金格差の是正にあたって、仕事や雇用管理区分の異なる男女間に生じた賃金格差についても適用するものであることを告示ないし通達をもって明らかにし、九月提出の一〇〇号に関する政府報告に反映すること、評価の専門官を置くことなど求めた。

最後はILO前労働側理事の中嶋滋さんから、この勧告で日本は一〇〇号条約に実施に関しILOの全ての機関で「適用実施に問題あり」とされたこと、九月の政府報告に、三者協議で労使の意見の反映した報告が求められていることが報告された。会場からの質疑を受けて三氏から発言を受けて報告会は終了した。

(全石油昭和シェル労組 柚木康子)


 
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