不当解雇とたたかう日本航空労働者を支える会結成集会講演(要旨) / 全労協新聞 2011年12月号 2面

全労協新聞 2011年12月号 2面
 
 
1.全労協新聞


国鉄JAL闘争の共通点を語る宮里弁護士(11月7日)
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●不当解雇とたたかう日本航空労働者を支える会結成集会講演(要旨)
 
国鉄・JALに共通の組合差別と安全無視
勝利へ雇用・団結・安全一体の闘いを
 
 
支える会代表世話人
日本労働弁護団会長
宮里邦雄
 
 
 私は国鉄闘争に国労弁護団として二四年間関わってきました。JALの整理解雇問題を知った時に、いろいろな点で、国鉄の採用差別との共通性を感じました。一九八七年分割民営の際に、分割民営に賛成した組合員は九九%採用されたのに、反対した国労・全動労の組合員は三十%台、四十%しか採用されなかった。これが雇用を奪い団結権を侵害する不当労働行為だという事で二四年間闘ってきたのが、JR採用差別との闘いです。

 国鉄分割民営化の過程では、分割民営に反対する組合に対し、組合弱体攻撃と差別攻撃が行われました。国鉄からJRに労働者を引き継ぐ時に、採用という方式を取り、そこで露骨な組合間差別が行われました。国鉄の場合は国鉄改革法という法律の力を使ってやった点に特徴がありますが、基本的には整理解雇です。人員整理にあたって分割民営に反対した、それ以前の様々な合理化に反対するとか、公共交通の安全性を守るとか、そういう運動をしていた組合を排除するために、選別採用が行われたのです。この点がまさにJALの整理解雇と共通しています。

 もう一つのJALとの共通点です。分割民営化では、公共交通としての安全性とか利便性がかなぐり捨てられました。ローカル線の廃止、大幅な人員削減など、公共交通機関の持つ本来のあり方を検討することなく、いかに利益を上げるか、そのためには人員が多すぎる、労働条件が高すぎるとか、そういうことで進められました。この点でもJALの問題と共通するのではないでしょうか。

 分割民営化後も、徹底的に国労を解体することができず、国労や全動労への差別攻撃がずっと続きました。この過程で何とか組織を維持し、全国の支援共闘に支えられ、様々な支援の中で、昨年の六月最高裁で和解し一定の解決をみたことはご承知のことと思います。

 安全性が分割民営にあたり軽視されたと言いましたが、その象徴は国鉄総裁が作った安全綱領です。国鉄の事業運営の基本になるもので、「安全は輸送業務の最大の使命である。安全確保のためには職責を超えて、一致協力をしなければならない。疑わしい時は、もっとも安全と認められる道を選択しなければならない。」と書かれています。これが分割民営化後廃止されたのです。

 JRはその後、いかに利益を上げるのかという点を中心にして経営がされてきました。二〇〇五年四月二十五日JR西日本福知山線脱線事故がありました。一〇七人が死亡、五四九人が負傷した大事件です。社長は今業務上過失致死罪で被告人の座にあります。この事故の背景にあるのは、安全性を無視したダイヤ、過酷な労働条件、そこに介在する組合間差別の労務管理、これらが背景にあることは明らかです。この点もまた、JALの皆さんが闘いの中で、私たちの闘いは空の安全問題、航空産業の公共性の問題であると訴えられていることと、共通するのではないでしょうか。

 さて、JALの闘いは、労働運動として見るならば、二つの点で重要な意味を持っています。一つは、労働者が長年に亘って闘いの中で形成してきた整理解雇制限法理、いわゆる整理解雇四要件を守らせることができるのかという意味です。整理解雇反対闘争の積み重ねで、ようやくにして私たちは解雇自由攻撃に対してこの法理を獲得したわけです。決して十分な法理とは言えませんが、それでも経営者は四要件は使用者にとって厳しすぎるという批判をしています。

整理解雇の
法理を守れるか
 
 会社更生法下あるいは民事再生法下における整理解雇については、裁判所の監視下に置かれているので、整理解雇四要件は適用されるべきではないとか、大幅に緩和して適用すべきという意見が強く主張されています。使用者は、そもそも解雇は自由の主張を基本的に持っています。この基本的な主張が折に触れて、繰返し繰り返し出てくるわけです。解雇の金銭解決制度もそのひとつです。

 JAL整理解雇において、もしも整理解雇は緩やかでもいいと、会社更生下にあってはなお緩やかでいいという判決が出たら、経営側を激励することになります。JAL闘争の皆さんにだけでなく、全労働者にとって、整理解雇四要件という雇用保障の法理を、JAL整理解雇闘争において、我々は守ることができるのかどうか、全ての労働者、労働運動の課題だろうと思います。

 経営トップが裁判所に証人採用されるのは、本当に異例です。せいぜい人事部長です。稲盛会長が採用され、しかもその証言が雇用を続けることは不可能ではないということですから、どう考えても、整理解雇の必要性があったとは言えない事案でしょう。その他の要件についても、整理解雇の要件を満たすような事情はなかったというお話がありました。

 JAL整理解雇で、整理解雇要件が厳格に適用されるという結果を私達が勝ちとることができれば、整理解雇や様々な攻撃の中で闘っている労働者、労働組合を大きく励ますことになります。

 もう一つ組合攻撃との闘いという側面です。整理解雇に便乗し、これまで闘ってきた二つの組合を集中的に整理解雇の対象にすることは、所属する組合員の団結権を侵害することに他なりません。まさに組合攻撃です。

 この間管財人代理の発言が不当労働行為であるという労働委員会の命令が出ました。この命令の論評を『労働旬報』に書けと言われて、管財人にもJALの不当労働行為体質がしみ込んだのだろうかという事を書きました。このようにJALの闘争は、組合攻撃との闘いという側面もあるという事です。雇用保障の闘いと団結権侵害との闘い、この二つの側面をもった闘いが、JALの整理解雇闘争の持つ意味です。団結権保障のない所には雇用保障はありません。雇用保障を確実にさせるためには、団結権に基づく闘いが必要です。

 最後に勝利への展望を一言述べたいと思います。雇用、団結、安全は三位一体であるという観点から、JAL解雇反対闘争を私たちは支援していきたいと思います。

 今度の問題はJALの公共交通としての社会的責任が鋭く問われていると思います。労働者の雇用を蔑にする、あるいは雇用にとって最も重要な整理解雇法理という重要なコンプライアンスに違反したという点においても、JALの責任が問われるべきものだろうと思います。雇用と団結、安全、公共性というものを一体的にとらえて、この闘いの社会的な広がりを作っていく。そしてすべての労働者にとっての問題であるということを、ぜひ訴えて頂きたいと思います。「支える会」を作ってJALの闘いを支えようと思っているのも、まさにそのことがこの闘いの意味であるからです。

 公共交通や公益性を担うような企業、これは最も模範的な使用者でなければならない。模範的な使用者でない者は公共的な交通の場から去るべきです。
 

東京地裁での
勝つ意味
 
 東京地裁で勝利判決をとる事が、この闘いにとって極めて重要な意味があります。国鉄闘争を振り返れば、一九九八年五月二十八日、連戦連勝し地労委・中労委で勝った採用差別は不当労働行為であるという命令が、東京地裁で取り消されそして東京高裁で維持され、最終的には最高裁でも敗れました。この東京地裁での敗訴判決が、その後の私たちの運動を大きく困難にし、長期闘争になった原因でもあります。東京地裁において労働委員会命令の判決を獲得することができれば、その後の状況は大きく変わっていたでしょうし、実現しなかったJRへの復帰の道筋も可能であったはずであります。そういう意味で言うと、国鉄闘争にとって一九九八年の東京地裁不当判決は大きな障害となりました。

 JALの整理解雇反対闘争において、東京地裁で勝つことの意味は非常に大きい。勝てばJALの社会的な責任、使用者としての責任、雇用責任、団結権を侵害した責任が明らかになり、JALは解決を迫られる状況に追い込まれる可能性があると思います。もちろんそれを可能にするのは私たちの支援の闘いが必要になりますが、ぜひ東京地裁の判決勝利を当面の大きな運動の節目として位置付けて、闘争を進めて頂きたいと思います。

 今日、東日本大震災原発事故などから、安全安心とは何かとか、安全安心をコスト優先で軽視した時にどのような事態になるのか、私たちは身を持って体験しました。空の安全も無関係ではないと思います。今日お集まりの皆さんが、JAL整理解雇反対闘争の持つ重要な意義、全ての労働者にとっても、JALを利用する利用者にとっても重要な意義を大いに広めて、この闘いを皆で物心両面から、JAL解雇反対闘争に勝利する、支える活動を皆さんと共に展開しようではありませんか。
 


 
 
2.写真(全国協に多数あり)

 

 
(F)