全労協新聞 2011年9月号 3面 問われる被ばく労働対策

 
①面 復興に向け社会運動としての労働運動を
②、③面 労働組合の社会的責任として違いを越えた広大な脱原発戦線を/許されない被ばく線量の緩和、徹底した線量管理を拡大する放射能汚染、問われる地域・職場の対策
④面 ウェザーニューズの組合つぶし 委員長解雇を許さない/不採用問題終結 苦渋の決断で確認/全労協に加盟 新たな出発の一歩/放漫経営・団交拒否に抗議のストライキ
 
 


●特別報告(問われる被ばく労働対策)


許されない被ばく線量の緩和、徹底した線量管理を
拡大する放射能汚染、問われる地域・職場の対策
 
 
 3・11大震災による福島第一原発の事故は、地震発生直後から炉心のメルトダウンがが起き、水素爆発ととともに大量の放射性物質が放出された。事故発生から五か月を経てもなお、炉心の安定冷却が進まず、大気や海中、土壌、地下水へと放射性物質が漏れ出している。

 三月十四日、政府の原子力緊急事態宣言を受けて、厚生労働省は電離放射線障害防止規則の特定省令として、放射線被ばく線量の上限を緊急時一〇〇mSvから二五〇mSvへの引き上げた。

 高濃度被ばくを受ける労働者が続出し深刻な事態を迎えていることに危機感を持った私たちは、五月から八月にかけて三回にわたり厚労省原子力保安院文科省との交渉を行ってきた。その中で、保安院が「今後、一千人〜二千人前後の熟練技術者が不足する事態が継続することになる。これは福島第一原発の処理及び全国の原子力発電所の運用に重大な支障を来す」のをおそれ、「今回の緊急作業で受けた線量は、平常時の線量限度の枠外」で扱い、「作業員の安全性は、生涯線量一Svを遵守することで担保する」べきとして、厚労省に解釈の変更を迫っていた。保安院原発維持・存続を優先し、被ばく線量の限度を撤廃するよう求めている。

 私たちは被ばく線量限度の緩和を許さず、徹底した被ばく線量の管理を求めた。全国の原発で働く熟練労働者を福島第一原発の復旧作業にあたらせることが何より事故収束に必要だ。たとえ他の原発が稼動できなくなっても、それが脱原発のプロセスにもつながると考える。
 3・11以降、放射能汚染は広範囲に拡大しているなかで、被ばく労働はもはや原発労働者や放射線業務従事者にとどまらない状況を迎えている。
 
 私は七月六日、都内で開催された「放射能を考える労働者の集い」で原発災害に関する政府交渉を報告した。集会では、全国一般東京労組全労新聞輸送分会から、被ばくしながら運輸業務を行うことの是非が問われ、仲間の命を守るため新聞社、会社経営陣と真剣な交渉を行ったことが報告された。

 全港湾は港湾における放射線対策を作り、港湾労働者と港湾輸送の安全確保のため政府と協議している。福島県内の下水処理施設からは高濃度の放射性物質に汚染された汚泥・溶融スラグが検出された。セメントの資材として運送に従事する全日建運輸連帯労組は、地域住民とトラック運転手の安全確保を国交省に申し入れた。

 今まで放射能対策とは無縁の職場で、深刻な対応が求められる状況が生まれている。
 
 3・11原発災害以後、職場や地域で放射能とどう向き合うかが問われるようになった。放射能汚染を過小評価する政府・自治体の安易な対応策に委ねることはできない。労使交渉や地域住民とも議論しながら、職場、地域における放射能対策の取り組みが求められている。

(東京労働安全衛生センター事務局長 飯田勝泰)


 
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