全労協/ 隠ぺいと捏造の安倍政権 / 新聞 2019年7月号

全労協隠ぺいと捏造の安倍政権 / 新聞 2019年7月号



隠ぺいと捏造の安倍政権を
終わらせるために

全力で参議院選挙を闘おう!



 日本の経済的低迷、政治的混迷の出口が見えないまま、参議院選挙が近づいている。安倍自公政権となって以来、政治経済状況は決して好転する兆しを見せていない。むしろ、公私混同と言われる森友加計疑惑に続き、勤労統計調査の捏造や隠蔽といった事実が連日のように明るみに出されている。にも関わらず、「他の政権よりは良さそうだから」というあまりにも消極的理由によって、安倍政権への支持率は一定水準に維持されている。

 安倍政権の下、データの上では日本の経済成長は戦後最長に及ぶのだそうだ。いくつかの経済指標は「アベノミクス」の恩恵として語られている。

 GDP(国内総生産)の拡大、増収増益を続ける企業業績、堅調に椎移する株価、求人倍率の上昇と失業率の低下傾向。オリンピック招致による景気拡大、外国人観光客の拡大も好材料に加わる。こうしたことが、かつての高齢層、農村部に代わって、若年層、都市部住民の支持に結びつくのだろう。

 しかし私たち労働組合は、労働者にとってそれらのデータが本当に恩恵の名に値するのかを解明し、本当の性格を明らかにしなければならない。他の政権よりは良さそうなどという「気分」に身を任せるのではなく、事実をもって判断材料としなければならない。

 GDP云々の一方で、かつてトップクラスと言われた家電や通信機器、パソコンなどの製造業では軒並み不振が続き、アメリカだけでなくアジアの新興国に追い抜かれている。オリンピック景気は、文字どおりの箱ものでその場しのぎでしかなく、国の債務は拡大し続けている。増収増益はすべて大企業の内部留保に流れてしまう。

 労働者の実質賃金は低下を続けており、「順調」な業績の実感は行き渡らない。株価は日銀や年金資金等の公金の投入によって買い支えされているに過ぎず、本当の利益は海外投資家に流出している。雇用は安定とは無縁の非正規労働者の拡大によって支えられているのか実態だ。

 先日、金融庁の審議会報告書の書かれた公的年金制度の危うさを、麻生財務相が請け売りで□外し大騒ぎとなったが、報告書が政府の方針と違うことが問題なのではない。公的年金資金がこのままでは足りなくなることそれ自体は事実でしかない。それを自助努力で補えと政府の要人が何の反省もなく□にしたことと、世間の評判が悪いと見るや、責任をそっくり金融庁に押しつけ、報告書を「受け取らない」ことで、あったものをなかったことにする態度こそが、政権のこそくな体質をよく現している。

 安倍政権のおかげで本当に何か良くなったのか?労働分配率はどう変化したのか?労働者の実質賃金は上がったのか?労働時間の短縮は前進したのか?職場のハラスメントは?年金制度の見通しは?本当の統計はどこにあり、私たちは何を実感できるのだろうか。働きながら家庭を持ち、子供を安心して産み育てていく社会基盤がどんどん失われ、少子高齢化がさらに進んでいるのが実態ではないだろうか。

 日本企業か近隣諸国に追い抜かれていくことへの不安は、近隣諸国に対する憎悪感情、差別排外主義に向けられている。こうした感情の返す刀で、対米従属の強化で「安心」を得ようとする力が働く。終身雇用の崩壊への不安は、外国人労働者排斥へと向けられる。年金制度、社会保障への不安もまた、在日外国人や生活保護受給者らに向けられる。子供の減少は、「産まないやつが悪い」と個人の問題に帰せられていく。

 野党はどれも政権担当能力が未知数で不安、かつての民主党政権のような経験はもうこりごり、と言う声は少なくないだろう。しかし、隠蔽と捏造にまみれた現政権よりは「まし」な政権を追求することは大切だ。

 私たちのあきらめや政治的無関心は、低投票率へと繋がり、現政権の延命に手を貸すことになる。全労協は、すペての労働者の明日にかけて、安倍政治を終わらせるために参議院選挙を全力で闘う。

(渡邉洋 全労協議長)