非正規差別は収奪の構造的問題 / 全労協新聞 2017年6月号

非正規差別は収奪の構造的問題 / 全労協新聞 2017年6月号


全労協
http://www.zenrokyo.org/

全労協新聞
http://www.zenrokyo.org/simbun/sinbun.htm
より

労働法制プロジェクト

非正規差別は
収奪の構造的問題



昨年五月労働契約法二〇条裁判で東京地裁判決から原告勝利の画期的な判決がでた。

再雇用後も全く同じ仕事で働く労働者が訴えた長沢運輸事件である。しかし控訴審はたった一回の弁論で結審、同年十一月地裁判決を取り消した。理由は「定年前に比較して一定程度賃金が減額されることは一般的であり、そのことは社会的に容認されていると考えられる」からという。

これは「女性やパート、有期雇用は安くて当たり前」を助長するもので、差別を許さないという人権意識のかけらもない。地裁判決から高裁判決の半年間に司法の場で何かあったことが窺われる。

三月二十三日に出された東京東部労組メトロコマース支部の二〇条裁判地裁判決はもっと露骨であった。いわく比較すべきは同じ仕事をする正社員ではなく六〇〇人の管理職を含む正社員が相当、正社員の手当や褒賞を優遇するのは「有為な人材を確保する」ために一定の合理性がある、賃金格差は不合理とまでは言えないと。

これらの状況を受けて五月二十五日、労働法制プロジェクトは労働契約法二〇条裁判を踏まえ学習会を行った。講師は中央大法学部名誉教授の近藤昭雄さん。近藤さんは労契法ができた時に出された「平二四・八・一〇基発〇八一〇第二号」を紹介しながら、労契法は是正対象者の少ないパート法八条、九条ほどの「強さ」もなく、その是正の射程範囲は通勤手当、食堂の利用、安全管理などの労働条件の相違を抑制程度のものであったと看破。長沢運輸やメトロコマースヤマト運輸の判決も紹介し「法」に依拠した闘いではおのずと限界がある、そこを自覚した闘いの必要性、非正規差別は日本資本主義の収奪行動から生まれた構造的問題であり、港湾労働におけるヤクザや組との全港湾の闘いが今も派遣の対象にさせていない意味を語り、最後に「我々の同一労働同一賃金はこうだ」を掲げて行く必要を訴えられた。一時間の予定が大幅に伸びたがメトロコマース支部の後呂さん、郵政ユニオンの中村書記長の発言や質疑を受け充実した学習会となった。

三十日には四回目の労政審同一労働同一賃金部会が開催される。同一でなくても均衡をどう取るのかがきちんと論議されるべきだ。

(柚木康子常任幹事)