TPP 第十九章 労働 (後半)


TPP 第十九章 労働 (後半)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_kariyaku/160202_kariyaku_19.pdf

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十条 協力
十一条 協力的な労働対話
十二条 労働評議会
十三条 連絡部局
十四条 公衆の関与
十五条 労働協議



第十九・十条 協力

1 締約国は、労働基準を改善する機会を増大させ、及び労働に関する事項(労働者の福祉及び生活の質並びにILO宣言に述べられている原則及び権利を含む。)についての共通の約束を更に進めるため、この章の規定の効果的な実施のための仕組みとしての協力の重要性を認める。

2 締約国は、協力活動を行うに当たり、次の原則を指針とする。

(a) 各締約国の優先事項、発展の水準及び利用可能な資源の考慮

(b) 締約国の広範な関与及び相互の利益

(c) 能力と能力開発の活動(労働に関する保護についての問題に対処するための締約国間の技術支援及び職場における革新的な慣行を促進するための活動を含む。)との関連性

(d) 算定可能であり、肯定的であり、及び有意義である労働に関する成果の創出

(e) 協力活動において利用する資源を最大限に活用するための資源の効率性(適当な場合には、技術の利用を通ずる効率性を含む。)

(f) 労働問題に対処する現行の地域及び多数国間の自発的活動との補完性

(g) 透明性及び公衆の参加

3 各締約国は、協力の可能性のある分野を特定し、及び協力活動を行うに当たり、自国の利害関係者(労働者の代表者及び使用者の代表者を含む。)の見解を求め、及び適当な場合にはその参加を求める。協力活動については、関係する締約国の合意により、二国間又は複数国間の約束を通じて行うことができ、また、関連する地域的機関又は国際機関(ILO等)及び非締約国を関与させることができる。

4 この章の規定の範囲内で行われる協力活動の資金の調達については、個々の場合に応じ、関係する締約国が決定する。

5 締約国は、この条に定める協力活動に加え、適当な場合には、労働問題への取組における締約国の共通の利益を助長するため、地域及び多数国間の場において会合し、並びに当該場の参加国としてのそれぞれの地位を活用する。

6 協力の分野には、次の事項を含めることができる。

(a) 雇用の創出及び生産的で質の高い雇用の促進(豊富な雇用を伴う成長を創出し、並びに持続可能な企業及び起業家精神を促進する政策を含む。)

(b) 持続可能な成長及び新たな産業(環境に関する産業を含む。)における雇用のための技能の開発と関連を有する生産的で質の高い雇用の創出

(c) 労働者の福祉を向上させ、並びにビジネス及び経済の競争力を高めるための職場における革新的な慣行

(d) 人的資本の開発及び雇用の可能性の増大(生涯学習、継続的な教育、訓練並びに技能の開発及び向上を通ずるものを含む。)

(e) 仕事と生活との均衡

(f) ビジネス及び労働の生産性の改善の促進(特に中小企業におけるもの)

(g) 報酬の制度

(h) ILO宣言に述べられている原則及び権利並びにILOが定義する適切な仕事の概念の啓発及び尊重の促進

(i) 労働法令及び労働に関する慣行(ILO宣言に述べられている原則及び権利の効果的な実施を含む。)

(j) 職業上の安全及び健康

(k) 労働に関する行政及び裁判(例えば、能力、効率性及び実効性を強化すること。)

(l) 労働に関する統計の収集及び利用

(m) 労働監督(例えば、遵守及び執行の仕組みを改善すること。)

(n) 多様であり、かつ、複数の世代にわたる労働力の課題及び機会に対処すること。当該課題及び機会には、次の事項を含むことができる。

 (i) 平等の促進及び差別の撤廃であって、移民労働者の雇用及び職業に関するもの又は年齢、障害その他の能力若しくは雇用上の要件に関連しない特性の分野におけるもの

 (ii) 女性の平等、女性に対する差別の撤廃及び女性の雇用上の利益の促進

 (iii) ぜい弱な労働者(移民労働者及び賃金の低い又は臨時の労働者を含む。)の保護

(o) 経済危機における労働及び雇用に関する課題に対処すること(例えば、ILOの仕事に関する世界協約における共通の関心分野を通じて対処すること。)。

(p) 社会的な保護に関する問題(労働者の職業上の負傷又は疾病の場合の補償、年金制度及び雇用を支援する仕組みを含む。)

(q) 労働関係に関する最良の慣行(例えば、代替的な紛争解決における最良の慣行を促進すること等により労働関係を改善すること。)

(r) 社会的対話(三者の間の協議及び連携を含む。)

(s) 多国籍企業における労働関係に関し、二以上の締約国において活動する企業が各締約国における代表的な労働者団体と雇用条件について情報を共有し、及び対話を行うことを促進すること。

(t) 企業の社会的責任

(u) 締約国が決定するその他の分野

7 締約国は、次の(a)の場において又は(b)から(e) までの形態により、6に規定する協力の分野における活動を行うことができる。

(a) 研究集会、セミナー、対話その他の知識、経験及び最良の慣行を共有するための場(オンラインの場その他の知識共有の場を含む。)

(b) 政策及び慣行について文書に記録し、及び研究するための研究旅行、訪問及び調査研究

(c) 相互に関心を有する事項における最良の慣行に関する協力的な研究開発

(d) 適当な場合には、技術的な専門知識の具体的な交換及び具体的な相互の支援

(e) 締約国が決定するその他の形態


第十九・十一条 協力的な労働対話

1 締約国は、他の締約国が第十九・十三条(連絡部局)の規定に従って指定する連絡部局に対して書面による要請を送付することにより、この章の規定の下で生ずる問題に関する当該他の締約国との対話をいつでも要請することができる。

2 要請を行う締約国は、要請を受ける締約国が回答することができるよう具体的かつ十分な情報(問題とする事項の特定、この章の規定に基づく要請の根拠の記載及び適当な場合には締約国間の貿易又は投資がどのように影響を受けるかを含む。)を含める。

3 要請を行う締約国及び要請を受ける締約国(以下この条において「対話を行う締約国」と総称する。)が別段の決定をする場合を除くほか、対話は、締約国が対話の要請を受領した日から三十日以内に開始する。対話を行う締約国は、誠実に対話を行う。対話を行う締約国は、対話の一環として、問題に関する利害関係者の意見を受領し、及び検討するための手段を提供する。

4 対話は、対面により又は対話を行う締約国にとって利用可能な技術的手段により、行うことができる。

5 対話を行う締約国は、要請において提起される全ての事項を取り扱う。対話を行う締約国は、問題を解決した場合には、その結果(適当な場合には、当該対話を行う締約国が合意した具体的な取組及び期限を含む。)を文書に記録する。対話を行う締約国は、別段の決定をする場合を除くほか、当該結果を公に入手可能なものとする。

6 対話を行う締約国は、5の規定に従って結果を作成するに当たり、利用可能な全ての選択肢を検討すべきであり、適当と認める行動方針を共同で決定することができる。当該行動方針には、次の事項を含むことができる。

(a) 当該対話を行う締約国が満足する形態の行動計画(労働監督、調査、遵守に関する行動等に関する具体的かつ検証可能な取組及び適当な期間を含めることができる。)の策定及び実施

(b) 遵守又は実施に関する独立の検証であって、当該対話を行う締約国が選択する個人又は団体(ILO等)によるもの

(c) 当該対話を行う締約国が労働問題を特定し、及び当該労働問題に対処することを奨励し、又は支援するための適当な奨励措置(協力計画、能力開発等)

第十九・十二条 労働評議会

1 締約国は、ここに各締約国が指名する大臣又は他の地位の政府の上級の代表者から成る労働評議会(以下この章において「評議会」という。)を設置する。

2 評議会は、この協定の効力発生の日から一年以内に会合する。評議会は、その後は、締約国が別段の決定をする場合を除くほか、二年ごとに会合する。

3 評議会は、次のことを行う。

(a) この章の規定に関連する事項を検討すること。

(b) 第十九・十条(協力)2に規定する原則を考慮しつつ、この章の規定に従って行われる労働に関する協力及び能力開発の活動についての締約国による決定の指針となる優先事項を定め、及び見直すこと。

(c) (b)の規定に従って定められる優先事項に基づく一般的な作業計画について合意すること。

(d) 一般的な作業計画を監督し、及び評価すること。

(e) 次条(連絡部局)の規定に従って指定する連絡部局からの報告を検討すること。

(f) 共通の関心事項について討議すること。

(g) 公衆の参加及びこの章の規定の実施に関する啓発を促進すること。

(h) 締約国が決定するその他の任務を遂行すること。


4 評議会は、この協定の効力発生の日の後五年目の年に又は締約国の別段の決定に従い、評議会の効果的な運営を確保するためにこの章の規定の実施について検討し、その結果及び勧告を委員会に報告する。

5 評議会は、締約国の合意に従い、その後の見直しを行うことができる。

6 評議会については、各締約国が輪番制によって議長を務める。

7 評議会の全ての決定及び報告は、評議会が別段の決定をする場合を除くほか、コンセンサス方式によって行われ、及び公に入手可能なものとする。

8 評議会は、各会合の終わりに、その活動に関する共同の概要報告書について合意する。

9 締約国は、適当な場合には、この章の規定に関連する事項について関係する地域的機関及び国際機関(ILO、APEC等)と連絡を保つ。評議会は、これらの機関又は非締約国との共同の提案の作成又は協力を求めることができる。

第十九・十三条 連絡部局

1 各締約国は、この協定が自国について効力を生ずる日から九十日以内に、自国の労働省又はこれに相当する機関の部局又は職員をこの章の規定に関連する事項を取り扱う連絡部局として指定する。各締約国は、自国の連絡部局について変更がある場合には、速やかに他の締約国に通報する。

2 連絡部局は、次のことを行う。

(a) 締約国間の定期的な連絡及び調整を円滑にすること。

(b) 評議会を支援すること。

(c) 適当な場合には、評議会に報告すること。

(d) 自国の領域において公衆との連絡のための経路として活動すること。

(e) 評議会の優先事項、第十九・十条(協力)6に規定する協力の分野及び締約国のニーズを指針として、協力活動を発展させ、及び実施するために協力すること(自国の政府の他の適当な機関と協力することを含む。)。

3 連絡部局は、二国間又は複数国間で具体的な協力活動を立案し、及び実施することができる。

4 連絡部局は、直接に又は電子的通信その他の通信の方法を通じ、連絡をとり、及び活動を調整することができる。

第十九・十四条 公衆の関与

1 評議会は、その活動(会合を含む。)を実施するに当たり、この章の規定に関連する事項の利害関係者の意見を受領し、及び検討するための手段を提供する。

2 各締約国は、自国の公衆(労働者団体の代表者及び事業者団体の代表者を含む。)がこの章の規定に関連する事項について意見を提供するため、労働に関する国内の協議機関若しくは諮問機関又は類似の仕組みを設け、又は維持し、及び当該協議機関若しくは諮問機関又は当該類似の仕組みの意見を求める。

第十九・十五条 労働協議

1 締約国は、この章の規定の下で生ずる問題を解決するため、相互尊重の原則に基づく協力及び協議を通じてあらゆる努力を払う。

2 締約国は、他の締約国の連絡部局に対して書面による要請を送付することにより、この章の規定の下で生ずる問題に関する当該他の締約国(以下この条において「被要請国」という。)との労働協議をいつでも要請することができる。当該締約国(以下この条において「要請国」という。)は、被要請国が回答することができるよう具体的かつ十分な情報(問題となっている事項の特定及びこの章の規定に基づく要請
の法的根拠の記載を含む。)を含める。要請国は、他の締約国に対し、それぞれの連絡部局を通じて当該要請を送付する。

3 被要請国は、要請国と別段の合意をする場合を除くほか、要請の受領の日の後七日以内に当該要請に対して書面により回答する。被要請国は、他の締約国に対してその回答を送付し、及び誠実に労働協議を開始する。

4 要請国又は被要請国(以下この条において「協議国」と総称する。)以外の締約国であって、問題に関する実質的な利害関係を有すると認めるものは、要請国が労働協議の要請を送付した日から七日以内に、他の締約国に対して書面による通報を送付することにより、当該労働協議に参加することができる。当該通報を送付する締約国は、当該通報に当該問題に関する自国の実質的な利害関係の説明を含める。

5 締約国は、被要請国が要請を受領した日の後三十日以内に労働協議を開始する。

6 労働協議においては、次のことを行う。

(a) 各協議国が、問題を十分に検討することができるよう十分な情報を提供すること。

(b) 当該労働協議に参加する締約国が、当該労働協議の過程で交換される秘密の情報を、当該情報を提供する締約国と同様の条件で取り扱うこと。

7 対話は、対面により又は対話を行う締約国にとって利用可能な技術的手段により、行うことができる。労働協議は、対面により行う場合には、協議国が別段の合意をする場合を除くほか、被要請国の首都において行う。

8 協議国は、問題に関連する協力のための機会を考慮しつつ、この条の規定による労働協議を通じて、当該問題の相互に満足すべき解決に達するようあらゆる努力を払う。協議国は、当該協議国を支援するために選定する独立の専門家の助言を求めることができる。協議国は、あっせん、調停、仲介等の手続を利用することができる。

9 協議国は、この条の規定による労働協議において、他の協議国に対し、当該労働協議の対象となる問題に関する専門知識を有する当該他の協議国の政府機関その他規制機関の職員を関与させることを可能とするよう要請することができる。

10 いずれの協議国も、協議国が問題を解決することができない場合には、他の協議国に対して連絡部局を通じて書面による要請を送付することにより、当該問題を検討するために評議会における協議国の代表者が会合することを要請することができる。その要請を行う締約国は、他の締約国に対して連絡部局を通じてその旨を通報する。評議会における協議国の代表者は、協議国が別段の合意をする場合を除くほか、当該要請の受領の日の後三十日以内に会合し、適当な場合には、独立の専門家の意見を求め、及びあっせん、調停、仲介等の手続を利用すること等により、当該問題を解決するよう努める。

11 協議国は、問題を解決することができた場合には、その結果(適当な場合には、合意した具体的な取組及び期限を含む。)を文書に記録する。協議国は、別段の合意をする場合を除くほか、他の締約国及び公衆に対して当該結果を入手可能なものとする。

12 協議国が2の規定に基づく要請の受領の日の後六十日以内に問題を解決することができなかった場合には、要請国は、第二十八・七条(パネルの設置)の規定に基づくパネルの設置を要請することができるものとし、その後は、第二十八章(紛争解決)に定めるところにより、同章の他の規定を利用することができるものとする。

13 いずれの締約国も、この章の規定の下で生ずる問題について、あらかじめこの条の規定によって当該問題の解決を求めることなく、第二十八章(紛争解決)の規定による紛争解決を利用してはならない。

14 締約国は、第十九・十一条(協力的な労働対話)の規定による協力的な労働対話の開始又は継続を害することなく、この条の規定による労働協議を利用することができる。

15 労働協議は、秘密とされるものとし、他の手続におけるいずれの締約国の権利も害さないものとする。