TPP 第十九章 労働 (前半)

TPP 第十九章 労働 (前半)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_kariyaku/160202_kariyaku_19.pdf

ミスタイプがあるかは、▲でチェックしてください。

第十九章 労働


一条 定義
二条 共通の約束の表明
三条 労働者の権利
四条 逸脱の禁止
五条 労働法令の執行
六条 強制労働
七条 企業の社会的責任
八条 啓発及び手続的な保証
九条 公衆の意見の提出
(10条以降は次のページ)


十条 協力
十一条 協力的な労働対話
十二条 労働評議会
十三条 連絡部局
十四条 公衆の関与
十五条 労働協議



第十九・一条 定義

 この章の規定の適用上、
 「ILO宣言」とは、国際労働機関(以下この章において「ILO」という。)の千九百九十八年の労働における基本的な原則及び権利に関する宣言並びにその実施についての措置をいう。
 「労働法令」とは、締約国の法律及び規則又は法律及び規則の規定であって、次の国際的に認められた労働者の権利に直接関係するものをいう。

(a) 結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認

(b) あらゆる形態の強制労働の撤廃

(c) 児童労働の実効的な廃止、最悪の形態の児童労働の禁止その他の児童及び未成年者の労働に関する保護

(d) 雇用及び職業に関する差別の撤廃

(e) 最低賃金(注)、労働時間並びに職業上の安全及び健康に関する受入れ可能な労働条件

注 シンガポールについては、最低賃金には、雇用法に基づいて公報に掲載される賃金の支払及び調整並びにセントラル・プロビデント・ファンド法に基づく賃金補完制度を含めることができる。

「法律及び規則」及び「法律又は規則」とは、(注)
注 定義を定める各締約国(連邦制度を採用するもの)については、自国の定義は、実質的に全ての労働者を対象とする。

(a) オーストラリアについては、連邦議会の法律又は当該法律に基づいて委任される権限の下で連邦総督が定める規則をいう。

(b) マレーシアについては、連邦憲法連邦議会の法律及び当該法律に基づいて定める下位法令をいう。

(c) メキシコについては、連邦議会の法律又は当該法律に基づいて公布される規則及び規定をいい、この章の規定の適用上、メキシコ合衆国憲法を含む。

(d) アメリカ合衆国については、連邦議会の法律又は当該法律に基づいて公布される規則をいい、この章の規定の適用上、アメリカ合衆国憲法を含む。

第十九・二条 共通の約束の表明

1 締約国は、労働者の当該締約国の領域における権利に関するILOの加盟国としての義務(ILO宣言で述べられているものを含む。)を確認する。

2 締約国は、ILO宣言の5に述べられているとおり、保護主義的な貿易の目的のために労働基準を用いるべきでないことを認める。

第十九・三条 労働者の権利

1 各締約国は、自国の法律及び規則及び当該法律及び規則に基づく慣行において、ILO宣言に述べられている次の権利を採用し、及び維持する。(注1、注2)
注1 この条に規定する義務は、ILOに関係する限りにおいては、ILO宣言にのみ関連するものとする。
注2 締約国は、この1又は2の規定に基づく義務の違反を確定するためには、他の締約国が法律、規則又は慣行を採用せず、又は維持しなかったことが締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼす態様であったことを示さなければならない。


(a) 結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認

(b) あらゆる形態の強制労働の撤廃

(c) 児童労働の実効的な廃止及びこの協定の適用上、最悪の形態の児童労働の禁止

(d) 雇用及び職業に関する差別の撤廃

2 各締約国は、法律及び規則及び当該法律及び規則に基づく慣行であって、最低賃金、労働時間並びに職業上の安全及び健康に関する受入れ可能な労働条件を規律するものを採用し、及び維持する。(注)
注この2に定める義務は、締約国が、自国の法律及び規則及び当該法律及び規則に基づく慣行において、当該締約国が決定する受入れ可能な労働条件を定めることに関係するものである。

第十九・四条 逸脱の禁止

締約国は、各締約国の労働法令において与えられる保護を弱め、又は低下させることにより、貿易又は投資を奨励することが適当でないことを認める。このため、いずれの締約国も、締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼす態様により、次の自国の法律又は規則について免除その他の逸脱措置をとってはならず、又はとる旨提案してはならない。

(a) 前条(労働者の権利)1の規定を実施する自国の法律又は規則(その免除その他の逸脱措置が同条1に規定する権利と両立しないこととなる場合に限る。)

(b) 前条(労働者の権利)1又は2の規定を実施する自国の法律又は規則(その免除その他の逸脱措置が自国の領域内の特別貿易地域又は特別関税地域(輸出加工地区、外国貿易地区等)における同条1に規定する権利又は同条2に規定する労働条件の遵守を弱め、又は低下させることとなる場合に限る。)

第十九・五条 労働法令の執行

1 いずれの締約国も、この協定の効力発生の日の後、一連の作為又は不作為を締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼす態様で継続し、又は反復することにより、自国の労働法令の効果的な執行を怠ってはならない。

2 締約国がこの章の規定に基づく義務を遵守しない場合には、当該締約国が執行のための資源の提供について行った決定は、当該義務の不遵守を許容するものではない。各締約国は、第十九・三条(労働者の権利)1及び2に規定する基本的な労働者の権利及び受入れ可能な労働条件に関する労働についての執行活動における執行に係る資源の配分について、合理的な執行上の裁量を行使し、及び誠実な決定を行う権利を保持する。ただし、当該裁量の行使及び当該決定が、この章の規定に基づく自国の義務に反するものでないことを条件とする。

3 この章のいかなる規定も、締約国の当局に対し、他の締約国の領域において労働法令の執行活動を行う権限を与えるものと解してはならない。

第十九・六条 強制労働

 各締約国は、あらゆる形態の強制労働(児童の強制労働を含む。)を撤廃するとの目標を認める。各締約国は、締約国が第十九・三条(労働者の権利)の規定に基づき関連する義務を負っていることを考慮しつつ、自国が適当と認める自発的活動を通じ、全部又は一部が強制労働(児童の強制労働を含む。)によって生産された物品を他の輸入源から輸入しないよう奨励する。(注)

注 この条の規定は、締約国がこの協定の他の規定、世界貿易機関設立協定又は他の国際貿易協定に基づく自国の義務に反することとなる自発的活動を行うことを承認するものではない。


第十九・七条 企業の社会的責任

 各締約国は、企業に対し、労働問題に関する企業の社会的責任についての自発的活動であって、自国が承認し、又は支持したものを任意に採用することを奨励するよう努める。

第十九・八条 啓発及び手続的な保証

1 各締約国は、自国の労働法令並びに執行及び遵守の手続に関する情報が公に入手可能であることを確保すること等により、自国の労働法令に関する啓発を促進する。

2 各締約国は、特定の事項について自国の法令に基づいて認められる利害関係を有する者が、自国の労働法令の執行のための公平であり、かつ、独立している裁判所を利用する適当な機会を有することを確保する。当該裁判所には、各締約国の法令に定めるところにより、行政裁判所、準司法的な機関、司法裁判所又は労働裁判所を含めることができる。

3 各締約国は、2に規定する裁判所における自国の労働法令の執行のための手続(以下この条において「労働関連裁判等手続」という。)が、公正であり、衡平であり、及び透明性があること、正当な法の手続に従うものであること並びに不合理な手数料若しくは期限又は不当な遅延を伴わないことを確保する。労働関連裁判等手続における口頭陳述は、司法の運営のために公開しないことが要求される場合を除くほか、適用可能な自国の法令に従って公開とする。

4 各締約国は、次のことを確保する。
(a) 労働関連裁判等手続の当事者が、情報又は証拠を提出すること等により、それぞれの立場を裏付ける主張を行い、又はそれぞれの立場を防御することができること。
(b) 係争事案の本案に関する最終決定が次の要件を満たすこと。
 (i) 当該最終決定が、当事者が意見を述べる機会を与えられた情報又は証拠に基づくものであること。
 (ii) 当該最終決定が基礎とした理由を明示すること。
 
(iii) 手続の当事者及び自国の法令に定めるところにより公衆が、不当に遅滞することなく、書面により当該最終決定を入手することができること。

5 各締約国は、労働関連裁判等手続の当事者が、当該各締約国の法令に基づき適当な場合には、審査又は上訴を求める権利を有することを定める。

6 各締約国は、労働関連裁判等手続の当事者が当該各締約国の労働法令に基づく自己の権利の効果的な執行のため当該各締約国の法令に基づく救済措置を受けることができること及び当該救済措置が適時に実施されることを確保する。

7 各締約国は、労働関連裁判等手続における自国の裁判所の最終決定を効果的に執行するための手続を定める。

8 この章のいかなる規定も、締約国の裁判所が特定の事項について行った決定の再審理を要求するものと解してはならない。もっとも、第一文の規定は、裁判所の決定がこの章の規定に基づく締約国の義務に反するかどうかに影響を及ぼさないものとする。

第十九・九条 公衆の意見の提出

1 各締約国は、第十九・十三条(連絡部局)の規定に従って指定する自国の連絡部局を通じ、自国の国内手続に従い、この章の規定に関連する事項について、締約国の者から意見書を受領し、及び検討することを定める。各締約国は、意見書の受領及び検討のための手続(期限を含む。)を容易に利用することができるようにし、かつ、公に入手可能なものとする。

2 締約国は、自国の手続において、意見が検討の対象となるために少なくとも次の要件を満たすべきであることを定めることができる。

(a) この章の規定に直接関連する事項を提起していること。

(b) 
当該意見を提出する者又は団体を明確に特定していること。

(c) 提起される事項が締約国間の貿易又は投資にどのように及びどの程度影響を及ぼすかについて、できる限り説明していること。

3 各締約国は、次のことを行う。

(a) 意見によって提起される事項を検討し、及び当該意見の提出者に対し、適時に、適当な場合には書面により回答すること。

(b) 
他の締約国及び適当な場合には公衆が意見及びその検討の結果を適時に入手することができるようにすること。

4 締約国は、意見を提出した者又は団体に対し、当該意見の内容を検討するために必要な追加的な情報を求めることができる。





◆ILO

http://www.ilo.org/tokyo/lang--ja/index.htm
ILO駐日事務所

http://www.ilo.org/tokyo/about-ilo/organization/WCMS_236600/lang--ja/index.htm
ILO憲章、フィラデルフィア宣言

http://www.oit.org/public//japanese/region/asro/tokyo/standards/declaration.htm
労働における基本的原則及び権利に関する
ILO宣言とそのフォローアップ
1998年6月18日、国際労働機関(ILO)はジュネーブで開かれた第86回ILO総会

http://www.ilo.org/tokyo/information/publications/WCMS_236375/lang--ja/index.htm
公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言
第97回ILO総会により採択
2008年6月10日、ジュネーブ


経済連携協定

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/
経済連携協定EPA)/自由貿易協定(FTA