全労協/ 望んで「非正規」の道を 選んだのではない / 全労協新聞 2015年8月号

全労協/ 望んで「非正規」の道を 選んだのではない / 全労協新聞 2015年8月号


全労協
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全労協新聞
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全労協労働法制改悪反対全国キャラバン

派遣法改悪案の廃案に向けて
地域・職場から闘いの奔流を


●寄稿(愛媛地域合同労組)
望んで「非正規」の道を
選んだのではない



私たち井関農機の職場は、農業機械一つを生産するために異なる雇用形態の労働者が入り混じってその生産に従事しています。したがって、労働者が仕事上負わされる責任と義務は正規も非正規も変わりません。全く違いがないわけです。しかし、労働者が当然の権利として要求できる賃金は「正規社員」と「非正規社員」では大きく違いが出てきます。

井関における非正規の賃金等を見てみると、時間給は、最も高い労働者で、一、一〇〇円。一日七時間五〇分労働で八、二五〇円、月平均稼働二二日(一八一、五〇〇円)です。賃金月額の平均は十六~七万円、良くて十八万円です。会社が言うところの賞与もありません。手当は通勤費のみ。家族手当も、住宅手当もありません。老後の生活費となる退職金もありません。これでは結婚資金も貯められないし、結婚しても子供は持てません。

それでも、若いあいだは中途採用の正規社員登用に期待もしますが、年齢と共にそれは消えます。企業から独立している、闘う労働組合に加入していることが明らかとなれば、正規社員登用の道は閉ざされていきます。

望んで、「非正規」の道を選んだのではない、そうしなければ今日、明日の飯が食えないばかりに「非正規」を選んだ労働者がほとんどなのです。

そこで執拗に差別扱いをされてきた井関の非正規の労働者が、二十年前に子会社の社員というだけで不合理な扱いを受け、井関ファクトリー労組を母体として、えひめユニオン井関分会を立ち上げ、八年もの闘いを通して、結果、裁判で闘うことを決意しました。それが、一昨年施行された労働契約法の二十条です。井関農機の子会社である、(株)井関松山ファクトリーの契約社員二人、(株)井関松山製造所の契約社員三人の、計五人の組合員が松山地裁に差別待遇、賃金差別撤回を求めて提訴しました。

この裁判は、非正規雇用は私たち労働者が望んだことではなく、非正規労働者憲法に保障されている人間であることを明確にする闘いです。誰かが声を出し、誰かが立ち上がり、誰かがやらなければ、非正規労働者の差別待遇は改善されません。厳しい闘いが予想されます。それでも組合のこれまで築いてきた強固な団結と、そのもとで学習を積み上げた力で、仲間と共に、更に自らを奮い立たせ勝利の日まで闘い続ける覚悟です。