全労協/ ダム、原発、基地による強制と収奪への抵抗を / 全労協新聞 2015年6月号

全労協/ ダム、原発、基地による強制と収奪への抵抗を / 全労協新聞 2015年6月号


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コラム
疾風

ダム、原発、基地による
強制と収奪への抵抗を


全労協常任幹事
諸隈信行


新緑の季節、八ッ場ダム予定地見学会に参加した。「アベノミクス」という大型公共事業によるバラマキが断行される中、八ッ場ダムの本体工事が始まった。かつては賑わった水没予定地の川原湯温泉街で唯一残る旅館の主は「代替地に移転する気はない」と言う。今年いっぱいで旅館はたたむそうだ。川を挟んだ対岸の水没予定地で今も住んでいる男性は「代々暮らしてきたこの土地を簡単に離れられない。ここより良い所があればいつでも移転するが…」としみじみ語った。工事のために旧国道は封鎖され、残る住民への圧力が強まり、土地や家屋の強制収容を可能にする手続きが始まった。

東京では自己水源である多摩川を汚してしまった結果、利根川水域の水資源開発に多額の資金を投じ、水源地住民の犠牲と自然環境の破壊を押し付けながら、首都圏の水の確保を強要してきた。今なお、東京の水需要は減っているにもかかわらず、水の「収奪」は続いている。

福島第一原発事故をめぐっては、事故原因も不明、どこに溶け落ちたか分からない核燃料を冷却するために汚染水を大量に生み出し、大気中、海へと放射性物質の流出が続いている。多くの避難者を生み出し、賠償や健康不安、就労や生活不安、地域コミュニティの崩壊など、社会基盤・生活基盤の喪失と、その対策の遅れは被災者に大きな苦痛と不安を押し付けている。福島では原発関連死が震災時の直接死を超えた。

しかし、あたかも原発事故がなかったかのように原発再稼働のアクセルは安倍政権によって踏み込まれていく。大都市が水源を求めて水源地の自然環境と地域社会を破壊しながら水を「収奪」することと、核・放射能の恐怖を原発現地に押し付けながら電力を大都市が消費する構造が重なる。

沖縄が「本土復帰」して四三年。「核も基地もない平和な島」という沖縄の民衆の願いは裏切られている。沖縄は薩摩による武力侵攻を受けて以降、日本政府による差別と抑圧という支配を強制されている。戦後も沖縄では土地が「銃剣とブルドーザー」によって「収奪」され、平和憲法も実感できないまま軍事基地の重苦しさがのしかかっているではないのか。本土の人々が平和憲法下で安穏と暮らしている間に、今も基地と軍隊によって命と生活が脅かされている。

新たな基地はもうゴメンだ。今年の県民大会では「辺野古新基地NO!」のボードをもった参加者で会場はいっぱいになった。平和憲法を広め、「強制と収奪」への抵抗を強めよう!