全労協/ 安倍政権の労働法制改悪と闘おう / 全労協新聞 2015年4月号

全労協安倍政権の労働法制改悪と闘おう / 全労協新聞 2015年4月号


安倍政権の労働法制改悪と闘おう
成長戦略がめざす残業代ゼロ・解雇自由化を許さない
派遣の固定化につながる労働者派遣法改正案を廃案に


15春闘の賃上げについて、三月十八日自動車や電機など主要企業がベースアップについて三千円~四千円をそれぞれ労働組合に回答した。主要企業で過去最高水準の賃上げが相次いだことでマスコミなどは経済の好循環への一歩と評価した。安倍首相も、昨年十二月の政労使会議で経済界に賃上げ努力を要請していただけに、十八日の参院算委員会で、春闘で大手企業が大幅なベアを回答したことで「賃金上昇は過去一五年間で最高となった昨年の水準をさらに上回る勢いだ」と述べ歓迎した。連合の会長も記者会見で「デフレ脱却のため、一層の賃金引き上げを求めてきたが、その道筋が付いた」と評価したが、われわれは安倍政権の経済政策のアベノミクスのために闘っているのではない。

たしかに昨年を上回る水準のベースアップだが、雇用の数割にすぎない大企業に限定したはなしだ。しかも労働組合が闘って取ったわけではない。大企業と中小企業、正社員と非正規社員の賃金格差がある。非正規社員は約二千万人。労働者の約四割を占める。昨14春闘では中小で働く多くの労働者は「ベアはなかった。あっても物価上昇分に追いついていない」と答えている。物価上昇分を差し引いた実質賃金は、一月まで十九カ月連続のマイナスを記録している。大企業の正社員のベアを単純に喜んでいる場合ではない。経済の好循環につなげていくというのであれば、企業と中小との格差是正春闘の成果が波及しない非正規労働者の賃上げ、最低賃金引き上げなどが必要だ。これから中小企業の賃上げ春闘本格化する。生活できる大幅賃上げをめざして闘おう。

同時にわれわれの今春闘の大きな課題に労働法制改悪への闘いがある。

安倍政権が掲げる成長戦略の目玉とされる新しい働き方「残業代ゼロ」法が閣議決定された。対象は、平均給与額の三倍よりも相当程度上回る年収の高度専門職と位置づけ、年収要件について、省令で具体的に「一〇七五万円以上」と定めるとされている。「年一〇四日以上の休日確保などの健康に配慮する義務」も法案に盛り込み、「有給休暇を労働者に取得させることを使用者に義務付ける」なども、現実にサービス残業が横行するなかで企業はこれを遵守する意思があるとは思えない。

府は、「残業代ゼロ」制度の導入や裁量労働制など関連法案を、今国会で成立させ、二〇一六年四月施行を狙っている。「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれ、労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定の適用を除外し、働いた時間ではなく成果に賃金を払うという、これは「働き過ぎ助長『法』」ともいうべきものだ。これまで残業代の割増賃金があることで、長時間労働の歯止めになっていた。

今回この制度が導入されれば、長時間労働が今以上に増加することになる。昨年不十分ながらも過労死防止法が施行されたがこれに逆行するものだ。企業の都合良く働かせて賃金は払わなくても良いというようなこの制度の成立は絶対認められない。

労働者派遣法改正案が十三閣議決定された。昨年の通常国会と臨時国会で廃案となり今回は三回目の閣議決定ある。一部修正された労働者派遣法改正案は今国会で成立させ九月の施行を目指すとされている。塩崎厚労大臣は閣議後の会見で「三度目の正直。早期に成立すればありがたい」と語ったそうだが、「二度あることは三度ある」。派遣社員を受け入れる期間の制限が事実上なくなることで一生派遣という派遣の固定化につながる。なんとしてもこの法案をみたび廃案に追い込もう。