●安倍政権の雇用破壊
8時間労働制
破壊を許さない
一月十六日、厚生労働省は労働政策審議会労働条件分科会に新たな労働時間制度について報告書骨子案を提出した。骨子案は(1)働き過ぎ防止のための法整備、(2)フレックスタイム制の見直し、(3)裁量労働制の見直し、(4)特定高度専門業務・成果型労働制の創設として項目立てている。要は長時間労働による健康被害について配慮を示しながらも、より一層効率的に労働者を長時間働かせるための制度に切り替えようというのである。
今回の労働時間制度の改悪の目玉は、裁量労働制の拡大と、特定高度専門業務(???)なる項目立てを行い、労働の対価としての報酬を労働時間から切り離し、成果(!!!)で計ろうというものである。そのために時間外労働という概念を取っ払い、成果を得るために八時間労働制から除外しようというのである。第一次安倍政権の時代に自律的労働時間制度と銘打って導入されようとしたホワイトカラーエグゼンプションを対象業務を拡大して行おうというものである。長時間労働による過労死や精神疾患が拡大し、昨年十一月にようやく過労死防止対策推進法が施行したばかりであり、労働者の健康保持のために長時間労働を止めなければならないという時代に全く逆行するものである。名ばかり管理職や名ばかり見なし労働など偽装された裁量労働制や見なし残業、固定残業賃金などで低賃金・長時間労働に縛り付けるブラック企業がはびこり、労働者はダブル・トリプルワークによって健康を犠牲にして働いているのである。これら多くの事例は「極めて悪質」と裁判所によって厳しく指弾されているときに、これらの長時間労働を合法化させようというのである。許されることではない。
安倍政権は成長戦略の推進として「稼ぐ力の再建」を掲げて労働者にムチを振るうのである。「利益第一」の成果を求め、そのために労働者は馬車馬のごとく昼夜を徹して働けというのである。その足かせになる八時間労働制を破壊し、残業代という「過労から労働者を守るためのくびき」を取り除こうというのである。法定労働時間を超えて働かせるときは残業貸金を支払わなければならないという長時間労働への抑止効果を無にしようというのである。人らしく働く為に闘い取られてきた一日八時間労働制という大原則が危機にさらされている。骨子案は、最初に年収一〇七五万円以上、特定の専門業務労働者を対象にして導入するとしている。その後対象者を次々の拡大することを目指そうというのである。労働者派遣法が当初と異なり、登録型や製造業派遣に拡大し、ワーキングプアの温床になり、非正規労働が普通の働き方とされようとしていることと同様の道をたどる恐れが充分予見されるのである。政府はまず、長時間労働・過重労働を撲滅するため、過労死防止対策推進法を文字通り実効あるものとして具体化させることが求められているのである。