2015/02/07/ 市民集会「その会話で逮捕?~共謀罪を考える~暗黒の社会への道を許すな」 (兵庫弁護士会) (写真)

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2015/02/07/ 市民集会「その会話で逮捕?~共謀罪を考える~暗黒の社会への道を許すな」 (兵庫弁護士会)

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共謀罪の新設に改めて反対する会長声明
2014年(平成26年)8月20日
会 長 武 本 夕 香 子

政府は,過去3度廃案,継続審議となってきた「共謀罪」に関する法案(以下「法案」という。)を,改めて国会に提出する予定であることが報道されている。

共謀罪とは,「長期4年以上の刑を定める犯罪」(強盗,殺人などの重大犯罪だけでなく,窃盗・詐欺・傷害や公職選挙法違反など600以上もの犯罪)について,「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織」により行われるものの遂行を共謀した場合に成立し,これに5年以下又は2年以下の懲役・禁錮を科すというものである。すなわち,共謀共同正犯とは異なり,共謀罪が成立するためには,犯罪を遂行しようとの謀議があれば足り,犯罪実行行為も犯罪準備行為も不要とされる。のみならず組織的犯罪集団による謀議である必要もなく,2人以上の者の「犯行の合意」という極めて不明確な概念により処罰できるようになる。これは外形的行為のない意思の段階では処罰しないというわが国の刑法の大原則に反するばかりか,人々の表現行為を処罰するものである関係で表現の自由,集会結社の自由,ひいては思想信条等内心の自由など憲法上の根幹的な基本的人権に対する重大な脅威となるものである。

また,共謀罪の捜査は,具体的な法益侵害行為を対象とするものではなく,会話,電話,メールなど人々の表現行為を対象とするため客観的証拠に乏しいことも多く,必然的に捜査の自白への依存が高まり自白偏重主義に拍車をかけることとなる。本年7月に法制審議会の新時代の刑事司法特別部会が「犯罪捜査の通信傍受に関する法律」の適用範囲を財産犯にまで拡大する答申案を採択したが,共謀罪が新設されれば適用範囲が更に拡大されるおそれがある。さらに自白による刑の減免が規定されていることから、密告を奨励することになりかねず,捜査官によるおとり捜査の可能性も拡大し,適正手続の保障が害され冤罪が生ずる危険性が増大する。

そもそも共謀罪の新設は,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」をわが国が批准するための国内法整備として提案されたものと説明されている。しかし,同条約では,3条1項に適用範囲に関して「性質上越境的なもの」であり,かつ,「組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されており,さらに5条1項で,共謀の目的が「金銭的利益その他物質的利益を得ること」とされている。にもかかわらず,共謀罪法案では,対象犯罪や「団体」に関して何らの限定もなされておらず,目的による絞りもなされていない。そのため,暴力団やマフィアなど組織犯罪集団に限らず,市民団体がマンション建設反対の座り込みの相談やパレスチナ難民支援のカンパ集めの相談をすると組織的威力業務妨害や「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律違反」,労働組合が徹夜団交の相談をすると組織的監禁の共謀罪に該当するものとされかねない。政党・企業の活動も例外とは言えない。また同条約は,宗教的信念に基づくテロ集団を規制対象にするものでないことにも留意される必要がある。いずれにせよ法案は同条約の趣旨,目的とかけ離れている。

テロ行為はひとたび実行されると重大な結果が生じてしまうため,取締の前倒し(予防)の必要性は確かに顧慮されねばならない。しかし職業的犯罪集団による犯行が予想される重大な主要暴力犯罪には,現行法上,内乱・外患予備陰謀罪,殺人・強盗・放火・身代金目的誘拐予備罪,凶器準備集合罪などが既に定められており,また,化学兵器サリン航空機の強取,覚せい剤取締法銃砲刀剣類所持等取締法その他多くの特別法違反類型についても予備罪が既に設けられ,このような犯罪については新たな立法を待つまでもなく未然防止が可能である。よって,共謀罪を新設しなくても,我が国が国連条約に批准することは可能である。同条約を締結した諸外国においても,共謀罪を新設したのはノルウェーとスウェーデンが挙げられるのみであり,600余もの共謀罪を新設した国は確認されておらず,我が国において共謀罪を新設する必要性は存在しない。

以上から,当会は,思想信条の自由等重要な基本的人権を侵害し,自白強要,監視社会を招くことにより市民生活にとって重大な脅威となる共謀罪の新設に改めて強く反対する。


日弁連共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)