安倍政権はこの国を一体どこに向かわせようとしているのか。閣議決定された来年度予算編成の骨格となる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」と「日本再興戦略改訂」、「規制改革実施計画」は、「この一年間にアベノミクス三本の矢が功を奏し、デフレで失われた自信を取り戻しつつある」と評価する。
TPP交渉参加では、「『一方的に全ての関税を撤廃することを求められるものではない』、『聖域なき関税撤廃』」は前提でなく交渉の中で是正できるとしているが、新聞報道などでは「TPP参加に極秘条件付後発交渉できず打ち切る権利先発国」と伝えられている。TPPを推進したいのは一部独占的大企業で、医療や保険、食の安全基準等々、大企業だけが利益を得る国際基準に従わせようとするものだ。「『日本』を取り戻す」と語る安倍政権は、「TPP参加で日本の主権を譲り渡そうとする」とは正にそのとおりだ。
沖縄では、国家権力を総動員して辺野古新基地建設が強行されようとしている。そして普天間基地の即時閉鎖・返還と辺野古新基地建設に反対する闘いも続いている。「国民の生命・財産」を守るというのであれば、辺野古新基地建設阻止はもちろんのこと、全ての米軍基地を沖縄から日本から撤去させるしかない。
敗戦から六九年、少なくとも公然と戦争の惨禍に巻き込まれることなく今日を迎えることができたのは憲法であり九条があったからだ。憲法九条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認する閣議決定は、日本がアメリカとともに再び戦争への道を歩もうとすることに他ならない。ここに至るまでに安倍政権は、「国家安全保障会議設置法」、「特定秘密保護法」の制定、「国家安全保障戦略」、「新防衛大綱」、「中期防衛力整備計画」、「武器輸出三原則」を撤廃し、他国にも武器輸出を可能とする「防衛装備移転三原則」に転換などを積み上げてきた。
そして安倍首相は、閣議決定を踏まえ、自衛隊法改正などの法整備について担当大臣を置くと明言している。法整備がされれば日本が攻撃を受けていなくても自衛隊は海外での戦争に参加することが可能となる。関連法は秋の臨時国会にも提出されるものと思われたが、世論の反発で支持率が下がった安倍政権は、来年の通常国会に先送りしたと報じられている。
「平和憲法を守れ!原発再稼働反対!」の闘いが全国各地で展開されている。安倍政権に対する支持率の低下もみられる。しかしこの世論の高まりの中でも、労働運動が安倍政権の暴走を止めるための役割を十分果たしきれていない。この闘いの責任はわれわれ労働運動が担わなければならない。
日本はいま大きな岐路にたっている。「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と公言する安倍政権。安全保障政策大転換を図ろうとする安倍政権。この政権が目指す国づくりを断固阻止するために、全労協は全ての労働者・国民が、安心して働き生活のできる社会実現のために、労働法制改悪反対、脱原発の闘い、反基地の闘い、反TPP、そしてさらに最大の危機に直面している平和と民主主義、護憲の課題に全力で対決していかなければならない。