最低賃金6 目安と社説

最低賃金6 目安と社説
 
1.目安

報道関係者各位 
平成24年度地域別最低賃金額改定の目安について
~ランクごとの仮定の目安はAランク5円、B~Dランク4円~

 
2.目安に関する記事


最低時給、全国平均で7円引き上げ…目安を答申
 
 厚生労働相の諮問機関・中央最低賃金審議会は26日、今年度の都道府県別の最低賃金(時給)について、全国加重平均で7円増となる引き上げ額の目安を答申した。
 
 
 目安通りに引き上げられた場合、最低賃金の全国平均は744円となる。今後、各都道府県の地方最低賃金審議会が答申内容を基に各地の引き上げ額を議論し、10月頃に新しい最低賃金を決定する。
 
(2012年7月26日21時50分  読売新聞)


 

全労協 FAX情報NO1546
中央最低賃金審議会
引き上げの目安・・・平均7円に決定!(全国平均では744円)

連合の談話
2012年7月25日
2012年度地域別最低賃金額改定の目安に関する談話

【談話】2年連続の低額目安を乗り越え、時給1000円に向けた着実な前進を
― 中央最低賃金審議会の2012年度目安答申にあたっての談話 ― 

 
 
4.社説

社説は、毎日と、京都と神戸

 
社説:最低賃金引き上げ 共働きでも貧困の現実
 
毎日新聞 2012年07月26日 02時30分

 働く人の賃金が生活保護よりも低いのはおかしい。産業や職種にかかわりなく、すべての働く人は法律で定めた最低賃金より多くの賃金を得ることが保障されているが、その最低賃金生活保護よりも低い「逆転現象」がまだ11都道府県で残っているのだ。これでは働く意欲がそがれ、モラルハザードが起きる。最優先して改善すべき課題である。
 2012年度の地域別最低賃金について、中央最低賃金審議会の小委員会は平均7円引き上げることを決めた。昨年に続き低い引き上げ水準である。首都圏や関西圏を中心にした「逆転現象」状態の11都道府県には一定の幅を持たせた目安額を定め、地域の審議会に具体額の決定を委ねることになったが、最高額で引き上げたとしても北海道と宮城県はまだ生活保護に届かない。今年度での解消が無理な場合は「原則2年以内に生活保護との逆転現象の解消を目指す」とされたが、もっと深刻に考えるべきではないか。
 結婚ができない、子どもが産めないという現役世代の貧困は少子化をさらに悪化させ、子育て世帯では子どもの健康や教育に暗い影を落としている。経済にも悪影響を及ぼす。可処分所得が国民の平均値の半分に満たない「相対的貧困」を見ると、日本の子育て世帯は14.2%で、先進国では最も高いレベルだ。子育て世帯の失業率は0.4%。働いているのに貧困にあえいでいる子育て世帯がいかに多いかを示している。
 もともとわが国は正社員の男性が一家の生活費をまかなう賃金を得るという考え方が強く、主婦のパートや学生アルバイトなどの非正規労働者の賃金は低く抑えられてきた。90年代以降に労働者の非正規化が進められ、現在では被用者全体の4割近くを占めるに至ったが、伝統的な雇用・賃金モデルは変わらず、非正規労働者は労使の賃金交渉から排除されてきた。最低賃金の改善が始まったのは、07年の最低賃金法改正で地域ごとに最低賃金を定め、違反者への罰金が2万円以下から50万円以下へと引き上げられてからだ。
 経営者側は最低賃金引き上げへの反発が強いが、相対的貧困を下回る現役世帯のうち、2人以上が働いている世帯が39%を占めている。米国の2倍、スウェーデンやフランスの3倍だ。夫婦共働きでも相対的貧困から抜け出せない社会は異常としかいいようがない。
 08年の自公政権時には「生活保護との整合性だけでなく小規模企業の高卒初任給との均衡を勘案し5年間で(最低賃金を)引き上げる」ことが打ち出された。労使とも重く受け止めて実現すべきだ。働く人が報われない社会に未来はない。



最低賃金  政治の力で待遇改善を
 

 京都など11都道府県で、最低賃金で働いても、生活保護水準を下回る逆転現象が起きている。パートやアルバイトで長時間働いているのに生活が苦しいとの悲痛な声があちこちで聞こえる。逆転現象の解消が焦点だった中央最低賃金審議会の小委員会が本年度の地域別最低賃金の引き上げ額の目安をまとめた。
 だが全国平均の時給は7円の微増で、労働者を失望させる数字になった。
 仕事に就くより生活保護を受ける方が収入が多くては、働く意欲さえ低下してしまう。京都府最低賃金は751円で、時給換算した生活保護水準を8円下回る。
 目安を受け地方審議会が秋に引き上げ幅をまとめるが、京都は目安の「4~8円」の最高額まで引き上げないと、逆転を解消できない。今回の目安では少なくとも北海道と宮城県では解消できない。
 2008年の最低賃金法改正は生活保護との整合性に配慮するとし、政府は10年に、「できる限り早期に全国最低800円を確保する」との目標を掲げた。
 昨年の小委員会は、東日本大震災で打撃を受けた企業側が引き上げゼロを主張し、7円増という非常事態だった。10円以上増が続いたそれまで5年間の流れは、今年もブレーキがかかったままだ。
 逆転現象の解消に猶予は許されない。政府や自民党は、生活保護水準の切り下げ検討を言い出している。自民党が主張したように生活保護給付を10%下げれば解消するが、それでは本末転倒だ。
 最低賃金は、生活保護の「一歩手前」のセーフティーネットだ。労働者の3人に1人は非正規で、うち男性の約6割、女性の約8割が年収200万円未満で暮らす。働く貧困層の生活改善なしには、生活保護受給者の就労支援は進まない。表裏一体の問題だ。
 政府が生活保護問題で厳格化を強調する姿は、働く貧困層の待遇改善で有効な手を打っていないことを、隠そうとしているようにさえ見える。
 不況にあえぐ零細企業と非正規労働者、バイトにさえつけない生活保護受給者が対立を強いられる構図は痛ましい。打開は政治の責任だ。
 最低賃金の大幅引き上げには、パート労働者と正社員との給与格差、雇用期間など労使が対立する労働法制の抜本的な見直しに踏み込む覚悟がいる。
 医療や福祉など求人が多い成長分野でも賃金が低いパート労働者が増えて、賃金上昇につながらないのはなぜなのか。長期的な産業構造転換を見据えて、適正な賃金の確保や待遇改善に、企業も政治も取り組むべきだ。
[京都新聞 2012年07月26日掲載]


http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0005242957.shtml
 
最低賃金/働く意欲引き出す水準に 
 
 
 賃金は生活の糧(かて)であり、働く意欲につながる。毎年、見直される最低賃金は働く人への最低限の保障といっていい。
 その都道府県ごとの目安を、厚生労働省中央最低賃金審議会の小委員会がまとめた。時給で示す2012年度の最低賃金の全国平均は744円で、前年度比7円増の低い上げ幅にとどまった。
 目安額を踏まえ、各地の審議会が地域の実情も考慮して金額を提示する。
 最低賃金で働いた場合の収入が生活保護の支給水準を下回る逆転現象が兵庫など11都道府県で起きており、解消が期待された。北海道と宮城県では解消されず、兵庫や東京なども目安の最高額を下回ると逆転状態が続く。大きく改善しないのは遺憾と言わざるを得ない。
 最低賃金の対象は、かつては学生や主婦パートが中心だった。だが、企業が人件費削減のために正社員を減らして非正規労働者に置き換えたことで、大学卒業後の若年層の割合が増えている。
 非正規雇用の男性の58%が平均年収200万円以下であり、世帯を構えるのは難しい。病気などをきっかけに生活保護に転じざるを得ない不安定な状況に置かれた層が増えている。こうした現状に目を向け、最低賃金の今日的な意味を問い直すことが労使の役割のはずだ。
 逆転現象が起きている地域は、11年度の最低賃金改定時と比べ、8都府県増えた。住宅扶助費の増加で生活保護の給付水準が上がる一方で、社会保険料の増加で手取り収入が減ったのが要因だ。
 審議会では労組側が全地域の逆転解消を迫った。経営側は、人件費を増やすと中小企業の経営悪化を招きかねないと反対した。人への投資が経営には不可欠という発想に、なぜ至らないのか。
 逆転現象について、政府は08年の最低賃金法改正で「生活保護との整合性に配慮する」とし、早期解消を目指す。逆転状態放置は、働くより生活保護の方が楽と考える風潮を広げかねないからだ。
 懸念される状況が起きている。生活保護受給者は働ける年齢層の増加などから210万人を超えた。生活保護費は過去最高額を更新し続ける。
 賃金抑制は少子高齢化と国内市場縮小という悪循環の大きな要因である。収入増加の多くを消費に回す低所得者層の賃金引き上げは内需拡大効果が大きい。
 低すぎる日本の最低賃金を他の先進国並みの千円に引き上げ、同時に中小企業支援の取り組みを強力に実施する。そうした働く意欲を経済再生につなげる大胆な発想が必要な時だ。
 
(2012/07/26 10:01)


 
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