被曝の因果関係を否定する文科省  全労協新聞 2012年2月号 2面

全労協新聞 2012年2月号 2面
 


脱原発に向けた労働者の闘い


 
●被曝労働問題で省庁交渉

被曝の因果関係を
否定する文科省
 
 労働者の被曝労働なしに原発は稼働させることが出来ない。まさに命と引き替えの労働が原発稼働を支えている。だからこそ作業従事者の被曝線量限度については電離則で年間五〇mSv、五年で一〇〇mSvという縛りがある。緊急事態対応時の被曝線量についても一〇〇mSvを超えないようにすることになっているが、福島原発事故対応で国はこれを二五〇mSvまで引き上げた。しかしその根拠は示されず運用されてきた。

 さらに被曝労働が原発作業に留まらなくなったのが、広範囲に飛散した放射性物質の除染作業等での被曝問題である。すでにごみ焼却場の灰が高濃度に汚染され、その処理が未定のまま蓄積されている実態があるが、そこに関わる労働者の被曝問題にどのように対処するのかが問題となってきている。清掃労働者に留まらない。下水道処理施設、除染作業従事者、汚染された地区に立ち入らねばならない公共事業従事者。原発内作業ほどの被曝にはならないとしても継続して被曝せざるを得ない労働者の被曝線量管理についてはきちんとなされなければならない。原発事故により従来の電離則で想定していないエリアでの被曝作業が発生している。新たな対策が必要だ。

 労働組合は当局や会社に対し、きちんとした被曝線量管理が行われるよう求め、国は関連省庁や企業に対し適切な指導を徹底させることが必要だ。
 労働安全センターなどが中心となって事故以降、被曝問題について関係省庁との交渉を重ね、被曝を抑え、管理をきちんと行わせるべく規制を求めてきている。また労災認定された場合の損害賠償について、厚労省が因果関係を認めているにも関わらず、文部科学省が原賠法を盾に因果関係を否定するという事態があることについて、文部科学省に対応を改めるよう求めている。
 
 少なくとも厚労省は可能な限り被曝を少なくする方向で物事を考えているようだが、文科省の担当官は「あくまで法律に従って」と木で鼻をくくったような対応に終始している。

 十二月二十一日の省庁交渉に初めて参加して、この文科省の対応には怒りがこみ上げた。

(全石油昭和シェル労組 滝 秀樹)
 

 
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