復興連帯・脱原発実現の12春闘を / 全労協新聞 2012年1月号 1面

全労協新聞
 
 
 


イメージ 1


脱原発を訴えて東京都内をデモ(12月10日)
 
 


復興連帯・脱原発実現の12春闘
 
消費税増税、TPP、沖縄基地等の政治反動を許さない
労働者派遣法の骨抜きを許さず抜本改正を
 
金澤 壽
 
 
 昨年二〇一一年は、世界的に台風などによる風水害や地震などの被害が多発し、日本においても大雨など自然災害が多発した年という印象が否めない。とりわけ東日本を襲った大地震とそれによる津波は多くの人命と家屋を奪い去り、今更ながら自然の脅威と人間の無力さを痛感させられた。そして大地震に誘発された東京電力福島原子力発電所の事故。全労協は、「安全神話に騙されるな」と一貫して反原発を訴え闘ってきたが、残念ながらわれわれの闘いが及ばず東京電力福島第一原発の事故が起きてしまった。そして、原発を推進してきた国、電力会社、それに群がる大企業、御用学者、マスコミ等の責任も問われなければならない。政府は「『冷温停止状態』になりステップ二は終了した」と発表したが、原子炉内を見たわけではなく全く信用できない。この事故による被害は、農林水産業、医療、労働、食の安全等々広範囲にわたり、収束への道筋が未だに見えない。

 東日本大震災の被災地では雇用の場が大量に失われ、派遣労働者をはじめとする非正規労働者が真っ先に犠牲になっている。被災地以外でも、企業の生産調整や生産拠点の移転等で派遣労働者をはじめ非正規労働者が次々と職を奪われている。二〇〇八年秋のリーマンショックに端を発した派遣切り、雇い止めによって職と住居を失った労働者が大量に年越し派遣村に集まり、その働かされかたが社会問題化した。

 しかし、二〇〇九年八月の政権交代から二年数ヶ月経過したが、労働者の雇用・生活は一向に好転することもなく、改正労働者派遣法は継続審議になっていた。

 ところが先の臨時国会会期末に突如として民主、自民、公明三党が大幅に修正した改正案を提出してきた。その修正案の内容は、「①登録型派遣と製造業派遣の原則禁止条項を見直す。②二ヶ月以内の日雇い派遣原則禁止について、禁止対象を世帯主に限定した上で、一ヶ月以内に緩和する。③違法派遣があった場合、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し込んだと見なす『みなし雇用制度』の導入については、公布から三年の猶予期間を設ける。」など、労働者保護の立場からみれば大
幅な後退である。

 いうまでもなく、登録型派遣は仕事がある時だけ派遣労働契約締結するものであり、製造業派遣は景気後退期に大量の失業者を生み出すもので直ちに禁止されるべきものである。まして日雇い派遣は究極の不安定雇用といわなければならない。「みなし雇用」制度は違法派遣を規制する上で極めて重要であり、施行を三年間延期することは、施行までの間の違法派遣を容認することにつながり、直ちに施行されなければならないものである。次の通常国会で再び論議されることになると思うが、このような労働者派遣法を通してはならない。

 また喫緊の課題として一昨年末に不当解雇された日本航空労働者の闘いがある。約一年のスピード審理で今年末までには判決が下されようとしている。この判決に日航のみならず多くの企業が注目することになると思う。国鉄国鉄改革法を使って採用差別をした。日航の闘いも、更生法下における整理解雇は「通常の整理解雇とは違う、整理解雇四要件は適用されるべきではない」となれば解雇自由の社会を許してしまう。日航の闘いは、十分な法理とはいえないがこの整理解雇四要件を守らせることができるのか、全ての労働者、労働運動の課題だと思う。

 12春闘は、雇用、沖縄の基地問題自衛隊の派遣問題、武器輸出三原則の見直し、消費税増税、TPPなど政権交代に対する期待が失われたが、労働者が安心して生活でき、人らしく働くことができる社会、復興連帯・脱原発社会の実現を目指して奮闘しよう。
 


イメージ 2


▲派遣法の骨抜きを許さない緊急院内集会(12月7日)


 
●労働者派遣法改正
修正案継続審議
抜本改正をめざそう
 
 
 臨時国会の最終局面で、店晒しにされてきた労働者派遣法改正案が、民・自・公三党修正合意がなったと、急に審議が開催され、強引にわずか二日間で衆参両院を通過させようとする動きがあった。「こんな幕引きは許さない!派遣法抜本改正を!」と、全労協、中小ネットの訴えを、衆議院参議院両厚生労働委員全員に送りつけ、十二月七日の委員会傍聴を行った。

 さらに、派遣法抜本改正共同行動の「派遣法改正案の骨抜きを許さない緊急院内集会」を開催し抗議の声を上げた。しかし、同日夕方から開催された衆議院厚生労働委員会は、午前を合わせても三時間足らずの審議で、採決、民自公三党修正案を採決してしまった。そのまま二日間で衆参を通過させる予定は、さすがに、多くの疑問と抗議の前で強行出来ず、委員会採決止まりとなり、次期通常国会に送られることとなった。
 
 今派遣法改正案にもまだまだ不十分性があったが、修正案は、改正案の骨としての製造業派遣、登録型派遣の原則禁止削除、見なし雇用制の導入三年先送り、日雇い派遣禁止期間の「三十日以内」の縮小と、まさに換骨奪胎、名だけ残した文字通りの「骨抜き法案」だ。震災や円高、ヨーロッパ金融危機を口実に、「規制強化は雇用機会を奪う」との経営側の都合の良い論理を許してはならない。
 
 派遣法抜本改正を求めて、引き続き、通常国会に向けて、ねばり強く闘い続けよう。
 


 
 
(F)