復興と脱原発の12春闘を闘おう / 全労協新聞 2011年12月号 1面

全労協新聞
 
1面

復興と脱原発の12春闘を闘おう
拡大する世界的経済危機に労働者の怒りの行動を
野田政権のTPP交渉参加、原発容認を許すな
 
 
 野田首相は十一月十一日、「財政にも苦しむ日本が発展を遂げる唯一の道だ」と述べ、農業団体や医療関連分野など、反対する多くの国民の意思を無視して、「交渉参加を前提に関係国との協議に入る」と、TPP交渉への参加を表明した。しかし、いまだに東京電力福島原子力発電所の事故による農林水産業、医療、金融、労働、食の安全等々の被害が深刻であり、今何よりも東日本大震災の復興を最優先させることが最重要課題であるはずであるが、TPP交渉参加がこれらに追い打ちをかけ、壊滅的打撃をあたえることは必至である。

 野田首相は主要二十カ国・地域(G20)首脳会議で、社会保障と税の一体改革案を踏まえ、「二〇一〇年代半ばまでに段階的に消費税率を十%まで引き上げる」と表明し、消費税増税を国際社会に公約した。民主党は「国民生活第一」を掲げ、「四年間は消費税増税しない」と公約して政権を奪取したはずだ。
 原発について首相は就任会見で、原発の新増設は「現実的に困難」「原発への依存度を可能な限り引き下げていく」と述べたが、「停止中の原発を再稼働させて短期的な電力供給を確保し、中長期のエネルギー政策は安定供給の必要性も踏まえて冷静に検討」する姿勢を示し、事実上菅政権の脱原発路線から原発容認路線に転換した。

 政権交代から二年が経過したが、労働者の生活は一向に好転することもなく、沖縄の基地問題自衛隊の海外派遣問題、武器輸出三原則の見直し、消費税増税、TPPと政権交代に対する期待感はこの二年間で完全に地に落ちた。二〇〇九年八月の総選挙で政権交代が実現したのは、自公政権による格差拡大など、痛みつけられた勤労大衆の期待が集まった結果ではなかったのか。民主党は本来の原点に立ち戻り、国民の信頼を回復できるようにしなければならない。

 しかし一方、日本経団連からは震災復興、円高を口実に再び規制緩和の要求が出され、野田首相は「成長無くして復興なし」と新自由主義へ急転回している。東日本大震災にもかかわらず、大企業は復興特需さえいわれているなかで、雇用は安定せず非正規労働者の割合は三四・三%(女性労働者では五三・八%、民間企業では三八・七%)に達し、年収二〇〇万円以下の労働者は一、一〇〇万人の超え、非正規労働者の四人に三人は年収二〇〇万円以下で働いている。復興増税をはじめ、公務員賃金大幅切り下げなど労働者・大衆へその痛みを押しつけようとしている。これにTPP参加で雇用はどうなるのか。これでは労働者の生活は一層深刻なものとなる。

 今、世界の資本主義体制の危機が現実的なものとなっている。アメリカ経済の後退をはじめ、経済危機はEU諸国で拡大し、特にギリシャでは深刻な国家破綻ともいうべき状況を呈している。福祉切り捨てと増税・低賃金でこの危機を乗り切ろうとしているが、労働者の怒りが、政府への激しい抗議行動として展開されている。そしてEU諸国の経済危機はポルトガルアイルランド、スペイン、イタリアへと波及し、それによる政権交代など深刻さをましている。「一%の金持ちと九九%の貧乏人」「ウオール街を占拠せよ」のスローガンは労働者の怒りを端的に表現している。

 明らかに現在の世界情勢は歴史の転換期を示している。全労協は12春闘を、組織された労働者・労働組合の社会的責任として、東日本大震災復興と原発に依存しない社会の実現を働くものすべての共通課題とし、労働者が安心して生活でき、人らしく働くことができる社会を実現するために、全力で闘わなければならない。
 

 
(F)