全労協新聞 2011年10月号 1面 脱原発を求める力で歴史の転換を

全労協新聞 2011年10月号 1面
 
 


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三コース、六万人のデモは長時間に。それでも元気に"脱原発"をアピール


脱原発を求める力で歴史の転換を
全力で政治変革へ社会運動として労働運動を
復興にむけて雇用の安定と確保は重要課題
 
 
九月二日、野田政権が発足した。政権交代から二年あまり、凋落の一途を辿っている民主党政権で三人目ということになる。権力基盤を失いつつあった自民党政権時代の、派閥対立の結果としての政権たらい回しに見えて仕方ないが、今回の大震災後、この国をどのように復興・再建していくのかが問われている政権だ。

それでは野田政権というのはどういう政権なのか。そもそも民主党の政治路線に理念がなく曖昧なもので、日本の将来について新政権が何を目指そうとしているのか現時点では分かりにくいが、しかし二年前のあの民主党に大勝をもたらした政権公約に立ち返るということでは明らかにない。それは日本経団連の米倉会長が新政権に対して最大限の賞賛と期待を表明していることから、この政権の性格は自ずと明らかだ。歴史の転換期といわれ、国民の期待を背負った政権交代だったにも関わらずその意義を大きく失っ
たと言わざるを得ない。

雇用情勢も依然として厳しく、派遣、非正規労働者は一、七〇〇万人を超えて増大し、年収二〇〇万円以下の労働者も一〇〇〇万人を超していると言われている。これに大震災が追い打ちをかけ、岩手、宮城、福島の三県で仕事を失ったり休業している人は約十三万人ともいわれている。

七月に発表された、「二三年労働経済白書」は失業、雇用形態、若者層の貧困について、とくに「若者層の失業と低賃金、貧困は社会の未来を暗くしている」と述べ「日本にとって最大の課題」であると述べている。非正規労働者が雇用者に占める割合は三三・七%、昨年より〇・三%の上昇し、正規雇用者は二〇一
〇年には二七万人減少し、非正規で常用雇用者は三二万人増えていると報告している。さらに「白書」は、
「相対的に賃金水準の低い非正規雇用の割合が増加することは、労働者の平均賃金を引き下げることになるが、九〇年代後半から二〇〇〇年代前半にかけて賃金の大きな低下要因となっている。二〇〇〇年代以降の平均賃金は、こうした雇用形態の構成変化要因も加わって、賃金低下が続いている」デフレ現象についても「雇用を起点とした経済の好循環の確立に向けた政策が求められる」と述べている。
今回の大震災という危機を利用して政府・財界は一層の新自由主義路線とTPP路線を推進し、災害に便乗して復興需要を経済成長の手段にしようとしている。今後の政局如何では保守化・右傾化の流れが一層強まり、勤労国民に対するしわ寄せが強まることが予想される。まさに「日本復興」のためには、雇用の安定と確保が喫緊の課題であり、労働運動や政治闘争の重要な課題となっている。

今回の大震災の被害を増幅させた東京電力福島第一原子力発電所の凄まじい事故は六ヶ月以上も経つが、いっこうに事故収束への道筋が見えてこない。この事故によって、県外に約三六〇〇〇人が避難を余儀なくされ、農林水産業・工業・観光業などが大打撃を受け、自治体は破壊された。大気・土壌・海水汚染、点在するホットスポット、学校やゴミ焼却施設での高い放射線、食品への放射線問題など、生産者と消費者への被害が拡大している。

しかし、野田首相は所信表明で「(国内の)原発新設は困難」としていたが、二十二日国連本部で「日本は原発の安全性を世界最高水準に高める」「原子力利用を模索する国々の関心に応える」と演説しその本性を表している。

全労協は結成以来今日まで方針に反原発を掲げて闘ってきたが、しかしその闘いは原発立地の現地に依存してきた。われわれの闘いの不十分さ故に、結果として原発を許してきた。この反省から、原発被害が全国的な規模で拡大してきている今日、全ての原発を即時廃止する国民的な闘いを展開するために本部に「脱原発プロジェクト」を設置し脱原発の運動を全力で取り組むことを確認してきた。

九月十九日、東京・明治公園に脱原発を求めて六万人をはるかに上回る人々が結集した。この力を全ての原発停止・廃炉に導き、国のエネルギー政策を転換させる原動力しつつ発展させ、国民運動として展開するために奮闘する。この力が歴史を転換させることができる。大震災の復興に向けた取り組みは、原発のない社会を目指すことを抜きにはあり得ない。労働運動もその社会的責任としてその役割を担わなければならない。

政治は格差と貧困に喘ぐ働く者のためにある、そうでなければならない。飽くなき利潤追求の資本とその政治を変えていくためには、社会運動としての労働運動が求められている。そのために全ての労働者を視野に入れた闘いに全労協は全力で取り組む。
 


 
(F)