全労協/ 水道法改正による運営権売却を許すな!闘いの舞台は自治体に / 新聞 2019年1月号

全労協水道法改正による運営権売却を許すな!闘いの舞台は自治体に / 新聞 2019年1月号



民営化促進水道法改正案採決強行
水道法改正による運営権売却を許すな!闘いの舞台は自治体に


十二月六日、コンセッション方式による水道事業の運営権売却、民営化を促進する水道法改正案が可決、成立された。衆議院でわずか二日、八時間の審議で強行採決参議院でも野党からの批判を振り切っての採決強行だ。

審議の中で、コンセッションの旗振り役である政府民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)にフランスの巨大水企業ヴェオリア社の社員が出向していることが明らかとなった。推進室による二〇一六年のヨーロッパ訪問では、同社による福田前内閣府補佐官への過剰な接待の指摘がされている。訪問先についても、再公営化を実施したパリが外されるなど極めて恣意的なもので、公平、公正とは言い難い。実際、浜松市の下水道事業をコンセッション契約したのは、竹中平蔵社外取締役を務めるオリックスヴェオリアが株主となっている浜松ウォーターシンフォニー。まさに利益誘導の「クローニー資本主義」(縁故や家族関係が大きな意味を持つ経済体制)にほかならない。

世界では民営化による料金高騰や水質悪化、不透明な経営を理由に再公営化の動きが加速している。その数は二〇〇〇年からの五年間で、三七カ国、二三五事業体に昇る。しかし、審議では、こうした問題点や災害時の対応などの不安にまともな説明がなされていない。「コンセッションは選択肢の一つで判断は自治体が行う」と厚労大臣は開き直るが、経営に苦しむ小さな事業者が、百戦錬磨の巨大水企業と渡り合うのは至難の技だ。

そもそも、法改正の要旨である「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題」を作り出したのは、老朽化対策を後回しにして、不要なダムなどの水源開発により事業者に負担を押し付け、業務の担い手である職員の削減、とりわけ技術、ノウハウの要である現業職員の不採用を自治体に強いてきた国であり、それに従ってきた自治体にある。必要なのは民営化ではなく、利益誘導政治を転換し、不要なダムなどの建設をやめて、財源を管路更新や施設更新への助成に振り向けることであり、小規模事業者への公々連携、必要人材の採用、育成による技術継承である。

今後闘いの舞台は自治体へと移っていく。現在、宮城県浜松市大阪市など六つの自治体がコンセッションの導入に名乗りを上げている。東京でも二〇二〇改革プランの中で下水道局水再生センター(処理場)へのコンセッション方式導入の検討がうたわれている。現場の労働者と市民、学者、専門家らがしっかりと議論を行い、自分たちの水の将来について考えていくことが大切だ。ワンマン首長による拙速な運営権売却を許してはならない。

(全水道東水労 国谷武志)