全労協/ 声明 セクシャルハラスメントは人権侵害です / 全労協新聞 2018年6月号



声明

全労協女性委員会


 財務省事務次官による女性記者へのセクシャル・ハラスメントは日本のジェンダー平等の実態を世界に知らしめた。安倍政権が「女性の活躍」を掲げながら、世界経済フォーラムが公表するジェンダー・ギャップ指数は下がり続け、二〇一七年一四四力国中日本は一一四位と先進国最低であるのも当然だろう。

 まず告発した被害者の勇気と行動に、私たちは「共にある」ことを表明したい。

 公開された音声テープを聞けば事務次官の発言はセクシャル・ハラスメントそのものだ。あの発言を「セクハラではない、言葉遊び」と言う人物が財務省事務方のトップとはあきれてものが言えない。その上セクシャル・ハラスメントとは認めす、仕事にならないからと辞任を申し出た。被害者に謝罪もしていない。これまでも彼は自らの権力をいいことに同じことをやってきたのだろう。だからなぜセクハラと言われるのか認識できないし、自分が行った行為の重大性に気がついていない。そんな人物を事務方トップにした任命権者の貴任は重大だ。


自ら定めた法も守らず、


 事務次官は省のトップとして人事院規則10‐10(平成十一年四月一日より適用)に基づいて職場のセクハラを防止する責任者のはずだ。財務省はあわてて上級職のセクハラ研修をしたが、これまで二十年間何をしてきたのだろうか。

 被害者へのバッシングに対し、四月二十一日に新聞労連は全国女性集会を開催し、参加した記者たちが被害の実態や改善策を語った。四月二十三日夕方には、バッシンクされている被害当事者を孤立させない、日本社会で今起きている「セクハラ」「性暴力被害」について「何が起こっているか」を共有する、バッシングを止めるために被害を被害として声を挙げられるようにするために具体的な意見を出し合うと緊急院内集会が開催され、二〇〇人の女性たちが声を上げた。

 これらの動きの中、財務省は四月二十七日セクハラを認定して減給二〇%六ヵ月の処分を発表した。処分は軽すぎると言わざるを得ない。

 財務省の行動もひどかったが、さらに火に油を注いだのが麻生財務大臣だ。

 麻生財務大臣は「本人が出てこなければどうしようもない」「福田の人権は無しっていうわけですか」(四月十七日)。「はめられて訴えられているんではないかとか、ご意見もある」(同二十四日)と発言し、財務省の処分発表後も「セクハラ罪と言う罪はない」(五月四日マニラにて)など二次被害となる発言を繰り返し、安倍首相は何らのコメントも発せず、女性の人権の尊重のかけらも見えなかった。これに対し五月七日には大雨の中財務省前で「♯WithYou セクハラは許さない」のプラカードを掲げ、女性たちがリレートーク財務大臣の責任を追及した。全国各地でも同様の行動が行われた。


不十分な法律の改正が必要
セクシャルハラスメント禁止法の策定を!


 第四次男女共同参画基本計画には「第七分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶」の八項において「セクシュアルハラスメントは人権侵害であるとの認識に立ち、防止のための事業主の意識改革を促進する」「セクシュアル・ハラスメントの行為者に対して厳正に対処し、再発防止策を講ずるとともに、被害者の精神的ケアを強化する。」と書かれている。今回の財務省財務大臣、首相の対応はそれとは程遠いものであった。

 国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は二〇一六年3月、日本政府報告の審議を踏まえ総括所見において三四項「(d)セクシュアル・ハラスメントに対して十分な禁止や適切な制裁がないこと、また締約国がILOの中核的条約である、雇用と職業における差別に関する一一一号条約を批准していないという事実」に懸念を表明し、三五項で「(c)職場におけるセクシュアル・ハラスメントを抑止するために、禁止と適切な制裁を規定する法規定を採択すること、また妊娠及び母であることを理由とするものも含め、雇用における差別があった場合の女性の司法へのアクセスを確保すること、(d)労働法およびセクシュアル・ハラスメントに関する行動規範の遵守を実施することを目的とした労働監督を定期的に行うこと」を勧告している。

 現行の均等法では十一条で事業主に対し、「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置」を義務づけているだけで、セクシャル・ハラスメントの禁止は規定されていない。法改正は急務である。

 そして五月二十八日から開催されているILO総会において「仕事の世界におけるハラスメント」に関する国際労働基準設定に向けた第一次計議が始まっている。労働側はILO条約と勧告による基準作りを求めているが、日本政府と経営側は単なる勧告で良いと回答しているようだ。だが日本の現状を変えるためにも政府は「条約と勧告」の成立を求め、セクシャル・ハラスメントの根絶を推進するベきだ。同時に私たちも職場内、組合内からセクシャル・ハラスメントをなくすために動き出そう。




世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2017」を公表


人事院規則10-10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)




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