全国労働組合連絡協議会 議長 金澤壽
官邸春闘にNO!
連合傘下の大手労働組合が経営側に春闘要求を提出し、労使交渉が始まっている。今年の春闘で安倍政権は、消費を刺激して経済を活性化させるために経済界に3%の賃上げを求めた。日本経団連はこの安倍首相の要請を受け入れ、日本経団連の春闘方針とも言うべき「2018年版経営労働政策委員会報告」(副題が「働きがいと生産性向上、イノベーションを生み出す働き方」)で、
①自社の支払い能力
②総額人件費
③利益が高水準にある企業は、と強調したうえで、「社会的な要請」として「3%賃上げ」を傘下の企業に呼び掛けた。
これに対して連合は、1月の定例記者会見で、「連合として主張してきたものの考え方も少なからず取り込まれているということではないかなと思います」と述べた。
いうまでもなく、安倍政権は、国家・企業の安定のために経済界に要請したのであって、労働者の生活実態からではない。安倍政権と日本経団連は一体なのだが、事実上、経済再生のためには政労資の協調は必要であると政府・財界に協力を表明した。
いまのところ、「主な労組のベア要求は前年と同額になるなど、月収ベースでは満額回答でも、3%に届かない企業が相次いでいる」と伝えられている。企業側の回答は3月14日に集中する見込みだ。そして、今春闘は、現在開会中の通常国会で議論されている「働き方改革」についても交渉の争点となる。
安倍首相は、今国会がはじまった1月22日「わが党は結党以来、憲法改正を『党是』としてかかげ、長い間、議論を重ねてきた。いよいよ実現する時を迎えている」と決意を述べた。
しかし、いうまでもないことだが憲法は国民が権力を律するためにある。いま改正しなければ国民に著しい不利益が生じる恐れのある事態なのか。
労働・生活に憲法を生かそう
自民党は2012年、現行憲法を全面改正する改憲草案を発表し、9条に関しては、戦力不保持の2項を削除し、国防軍の保持を明記した。そして、昨年5月、安倍首相は、1項の戦争放棄と2項を残しつつ、自衛隊の存在を明記する案を提唱し、東京五輪が行われる20年を「新しい憲法が施行される年にしたい」と語った。
2月5日の衆議院予算委員会で首相は、憲法に自衛隊の存在を明記する9条改憲について「自衛隊の正当性を明文化することは、わが国の安全の根幹に関わる。憲法改正の十分な理由になる」と意義を強調した。また、「明記によって、自民党の任務や権限に変更が生じることはない」とも指摘した。ならば直ちに9条を改正しなければならない切迫した事情がどこにあるのか。
日本国憲法12条には、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これをほじしなければならない」とされている。確かに、日々の生活や労働で憲法を意識しながら行なっているわけではないかもしれない。しかし、不安定雇用労働者が増大し、労働関連法の改悪がすすめられようとしている。改めて、労働の義務と権利を定めた憲法28条の意義を生かす春闘にしていかなければならないのではないか。