8時間働けば生活できる賃金を / 全労協新聞 2017年12月号

8時間働けば生活できる賃金を / 全労協新聞 2017年12月号


18けんり春闘が発足

貧困と格差と差別と闘う総がかり行動で
8時間働けば生活できる賃金を
戦争をしない させない社会へ

11月27日、18けんり春闘が発足した。労働者の生活は困窮し、安倍政権は朝鮮半島の危機を煽って軍備拡大と九条改憲と戦争体制作りに暴走している。

10月22日投開票された第87回総選挙は自民・公明与党が313議席を獲得して大勝し、憲法改正に必要な衆議院の3分の2議席を越える状況を許した。

しかし、その内実は自民党比例代表得票率は33・3%に過ぎず、選挙後も内閣支持率は40%前後しかない。「安倍一強」と言われてきた政権は、モリカケ疑惑や共謀罪強行採決を連続するなど、「権力の私物化」に対する批判は強く、政権基盤は確実に弱体化している。

安倍政権は選挙戦ではモリカケ疑惑・権力の私物化批判を隠し、経済政策の成果を強調して見せた。

しかし、この安倍政権下の5年間、異次元の金融緩和によって大企業と円安株高の恩恵を受けた富裕層を除いて、その恩恵は労働者市民にはもたらされず、貧困と格差が一層顕著な社会となってきたのである。

企業の内部留保は406兆円に達し、株式配当は70%増となっている。加えて、企業は法人税の引き下げを政府から取り付けている。こうした政府財界の癒着は企業モラルを確実に破壊してきた。東芝、日産、神戸製鉄、東レなど多くの大企業に不正な取引や会計操作が次々と明らかとなり、かつての品質を誇った日本の企業は信頼を根こそぎ失おうとしている。

一方、労働分配率は、一向に上昇せず、人件費は1%増に過ぎないのである。そして、雇用状況は有効求人倍率1・5を上回るというものの、低賃金・不安定雇用の非正規労働者は拡大し続け、全労働者の37%を越える状況となっている。


新たな闘いを

17春闘では、賃上げ率は2%に達することなく、労働者の実質賃金は下がるか横ばいが続き、国内消費の低迷も続いているのである。最低賃金は25円上昇したというものの、全国平均848円と生活できる賃金にはほど遠く、また、地域間格差は年々開きを大きくしている。地域経済の疲弊をさらに進める一因となっている。

にもかかわらず、政府は大企業優先の新たな政策として労働法制の抜本的改革に乗り出し、さらに労働者を疲弊させようとしている。

働き方改革」とネーミングして、同一労働同一賃金などと非正規労働者の処遇改善が実現するかのように欺瞞し、労働者をさらに使いやすくしようとしているのである。

通常国会に提出が予定されている「働き方改革推進法案」は、労働基準法、労働契約法、パート労働法、雇用対策法など8つの法律を一つにまとめて関連法として審議し、一括採択しようというものである。

労働基準法改悪では、高度プロフェッショナル制度という使用者の時間管理を免除し、あるいは36協定の特別条項で100時間未満まで時間外労働を認めるというのである。そして裁量労働制の対象職種を拡大しようというものである。

また、同一労働同一賃金と詐称しながら、その実差別を固定化し、労働契約法20条の不合理な差別を禁止する規定をパート法に移し、非正規差別の禁止原則を曖昧にしようとしている。

また、「雇用関係のない働き方」などと使用者責任から逃れ、労働者保護を放棄する働かせ方も進めようとしている。

また、公共サービス関連非正規労働者の雇用安定、処遇改善への闘いは新たな局面を迎えている。地方公務員法が改定され、非正規公務員の処遇改善を一定程度実現するとされているものの、特別職を一般職に任用替えするなど、労組法が適用される職員を無くす方向となっている。新たな闘いが求められている。


大きな社会運動を

公務員労組の確定闘争、民間労組の年末闘争を18春闘につなげ、「働き方改革=働かせ改革」に対抗し、8時間働けば生活できる賃金を求める闘いは長時間労働の規制を中心とした労働法制改悪反対の闘いと、「どこでも誰でも人らしく生活できる賃金」の獲得と、一体として闘うことである。最低賃金の大幅引き上げは喫緊の課題である。

私たちは労働者市民による闘いと国会や地方議会を含む議会内闘争と強固な連携を行いながら、組織の枠を越えて多くの労働組合、労働弁護団、様々な課題を闘っている諸団体が統合しながら18春闘の中で大きな社会運動を作り出すことが求められている。

労働組合は名実共にその中核を担うことが必要である。職場闘争に全力を挙げると共に、大きな社会運動として全国キャンペーンを準備することが必要であろう。

17春闘からはじまった、いわば「貧困と格差と闘う総がかり行動」をさらに拡大させると共に、非正規労働者の処遇改善を柱に、どこでも「8時間働けば生活できること」、「戦争をしない、させない社会」に向けて、安倍政権と対抗し、安倍自公政権の打倒によって平和で人間らしい生活を取り戻すことであろう。