参議院選挙後の課題 / 全労協新聞 2016年8月号

参議院選挙後の課題 / 全労協新聞 2016年8月号



全労協新聞
より



参議院選挙後の課題 
安倍政権打倒へ 労働者・労働組合がつないで
共闘の維持・拡大を


 安倍首相は今年の年頭のあいさつや施政方針演説で「未来に責任を持つ政党の協力を得て、改憲発議に必要な三分の二議席確保」「自分の総裁任期中に改憲を」と表明していた。そして在任中の改憲を目指す安倍首相は秋から国会で議論を進める考えを表明している。

 われわれはこの選挙をこの国の将来を左右する戦後政治の重要な分岐点になる歴史的な選挙であると位置づけた。

第二四回参議院選挙結果は憲法改正に前向きな改憲四党(自民、公明両党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党)が、非改選と合わせて国会発議に必要な三分の二(一八二議席)超となった。この結来、すでに衆議院は自公で三分の二議席があり、これに続き参議院でも憲法改正の国会発議が現実的なものとなってきた。

 選挙中安倍首相は、「やるベきことは、この道を力強く前に進んでいくことだ」と述べ、改憲を背後に隠して増税先送りやアベノミクスヘの期待感を煽った。「史上初めて有効求人倍率が一倍を超えた」「雇用か三年間で一一〇万人増えた」「高校生の就職率が高水準にある」と何度も成果を強調した。しかし、各種世論調査の結果を見ても「国民の八割は景気回復を実感していない」とされている。実質賃金は五年連続マイナス、個人消費は二年運続マイナス、子どもの六人に一人は貧困など、アペノミクスは一部の大企業や富裕層ばかりが潤い、労働者、市民の生活向上とはなっていない。それでも「アベノミクスは失敗していないが、道半ば。この道をしっかりと力強く前に進んでいく」と公言する安倍政権。この三年半あまり、アベノミクスは個人や企業、地域間の経済格差をますます拡大し続けている。

 一方、われわれが課題としてきた政策要求をなぞるように、子育てや年金、介護などの充実策。非正規社員と正社員の不当な賃金差を是正する 「同一労働同一賃金」の実現や最低賃金の引き上げなどを打ち出している。しかしその傍らで、「残業代ゼロ法案」ともいわれている、働いた時間にかかわらず成果で賃金が決まる労働基準法改正案が秋の臨時国会で本格的に審議されようとしている。

 安保・外交・原発問題では、三月に施行された安全保障関連法に基づき、正当防衛や緊急避難以外に「任務遂行のための武器使用」か認められ、駆けつけ警護」も可能となった。さらに、平時から米軍の艦船などを守る「武器等防護」のための態勢作りや日米物品役務相互提供協定改定の国会承認も得ようとしている。米軍普天間飛行場辺野古への移設計画をめぐっては、参院選で安倍政権の沖繩政策を批判する民意か改めて示されたにも関わらす強硬な姿勢で工事再開を始めようとしている。また、福島の事故後も原発重要視は変わらず、原子力を「重要なペースロード電源」と位置づけ、原発の再稼働を進める政策は維持される。


政治的統一戦線の
陣形をつくろう


 われわれの課題は何か。今回の参議院選では「衆参三分の二」の壁を打ち破ることはできなかった。しかし、野党四党は、安全保障関連法廃止や改憲阻止の下に、「野党統一侯補」を擁立し、全国三二の一人区では、十一選挙区で与党に競り勝った。これは野党共闘が一定の成果を上げた結果といえる。確かにわれわれは、特定秘密保護法や安全保障法の闘いで、大衆運動を背景とした力で安倍政権を退陣に追い込むことができなかった。だが一方で野党共闘を実現させたのはこの大衆運動の高揚がつくり出したものだ。そして巨大与党に対抗するには現時点では野党が共闘するしかないし、安倍政権打倒のためにこの共闘を維持・拡大させなけれぱならない。

 「衆参三分の二」を獲得したからといって一気に改憲手続きが進むわけではない。たとえ衆参三分の二以上の賛成で国会発議に至ったとしても、その後に国民投票過半数の賛成を得なければならない。それを見すえた、いわぱ「政治的統一戦線」の闘う陣形をつくり出していかなければならない。かりに安倍内閣を退陣に追い込んでもこの自公政権が続く限りその政治は変わらない。

 今、四党は「共闘」を維持して東京都知事選を闘っている。これに勝利することは単に都政にとどまらない。

 こうした線上に今回の参議院選挙の闘いがあり、また遅くない時期に予想される政権選択を問う衆議院選挙での共闘かある。この潮流を、われわれ労働者・労働組合がつないでいかなけれぱならない。

 (全労協議長・金澤 壽)