全労協
http://www.zenrokyo.org/
全労協新聞
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より
高揚した戦争法闘争
新しい大衆運動を労働組合が支えよう
金澤壽
「一億総活躍社会の実現」とは何か。自民党の総裁選で再選された安倍首相は、その後の記者会見で、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」などを掲げ、「誰もが家庭で職場で地域で、もっと活躍でき「一億総活躍社会をつくる」と述べ、GDP六〇〇兆円の実現にも言及するなど新たな「三本の矢」を提唱した。
「生涯現役社会や希望出生率上昇、介護離職ゼロ」をめざすとして、一億総活躍相まで置いた。「現在一・四程度の出生率を一・八まで引き上げ、五〇年後も人口一億人維持」し、誰もが職場や地域でもっと活躍できる社会を目指すという。
だがこのスローガン、少し立ち止まって考えてもらいたい。そもそも活躍しているかどうかをどの様に評価あるいは判断するのか。老齢や、介護、子育て、病気等々様々な理由で活躍しようにも参加できない人もいる。
出生率を引き上げるというが、それには安心して子育てができる環境か整備されてのことだ。今、派遣労働も含めた非正規労働者が二〇〇〇万人を超えて増え続けている。今国会でも労働者派遣法が改悪され「生涯派遣」に道を開いた。そして今回は先送りされたが労働時間の規制緩和、さらに不当解雇の金銭解決が目論まれている。まして解雇された労働者は活躍する場がない。こうした雇用や低賃金では子どもを産みたくても産めない。それどころか、結婚さえ困難な労働者を増やし続けている。
沖縄県民の圧倒的な民意を無視して強行しようとしている基地建設。未だに十一万人以上の県民が避難を余儀なくされている福島の原発事故、そうした中での川内原発の再稼働。このような状況で「一億総活躍社会の実現」ができるのかと。これらを解決してこそ初めて「一億総活躍社会の実現」ということが言えるではないか。
「一億総活躍」などと一括りにして、こうした山積する課題を置き去りにされたものは、「活躍できない人」として社会からはじき出してしまうことにならないかと懸念する。
「総がかり行動」を結集軸に反撃の闘い
同時に安倍首相はその記者会見で「憲法改正に」言及し、「日本の未来、私たちの未来を自分たち自身の手でつくりあげていく。時代が求める憲法の姿、国の形についても、国民的な議論を深めていきたい」と述べている。これはなんとしても阻止しなければならない。
今度の国会では連日国会周辺に各世代・職業を超えて結集し闘った。この中で、今まであまり聞かれなかった野党頑張れというコールか叫ばれ、来年の参院選ではこの法案に賛成した議員は落選させようと呼びかけている。こうした大衆運動の高まりの中で、当初安保法案にあいまいな態度をとっていた党も、参加せざるを得なくなり、お互いに手をつなぎあうという状況が作り出された。
こうした大衆運動の高揚は新しい国民運動の萌芽だと思う。世代を超えた労働者・市民も期待をしている。当然こうした大衆運動を労働組合・労働運動自身がしっかり支えていく責務がある。
それには「賛成した議員は落選させよう」と呼びかけるだけではなく具体的な提起か必要だ。そうした意味で言うと、来年の参院選は「総がかり行動実行委員会」を結集軸にした取り組みにする必要があると思う。
つぎの参院選は直接国民連合政権樹立を目指す闘いではないが、世論で示されている数宇を具体的な得票と議席で示す機会になる。秋期年末闘争と、来年の春闘をはじめとする連続した闘いは、自らの課題への闘いと同時にこうした政治的な課題を闘わなければならない。