安倍政権と 全労協は全力で対決する / 全労協新聞 2014年6月号 2面から



容認の安倍政権と
全労協は全力で対決する


いま日本は大きな岐路にたっている。焦点は集団的自衛権。五月十五日、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安全保障有識者懇談会、安保法制懇ともいう)」(座長柳井俊二元駐米大使)が、従来、憲法九条のもとで行使できないとしてきた集団的自衛権について、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認するよう提言する報告書を提出した。報告を受けた安倍首相は同日の記者会見で、「安全に重大な影響を及ぼす可能性がある時、限定的に集自衛権を行使することは許される、この考え方について今後さらに研究を進めたいと思います」と、具体例を挙げ集団的自衛権の行使容認にむけた基本的方向性を示した。

「報告書」は、安全保障環境が厳しさを増しているとしていくつかのポイントをあげている。同盟国などが攻撃された場合に、自分の国が攻撃されていなくても、実力で阻止する集団的自衛権、すなわち同盟国であるアメリカが攻撃された場合の対処だ。これまでの憲法解釈では日本に対する攻撃がない以上、自衛隊は対応することはできない。

これに対し「報告書」では、わが国の安全保障の基盤となる日米同盟を根幹から揺るがすことになるとして、集団的自衛権を行使すべきだとしている。シーレーンに紛争が起きた場合にも、日本の経済など、国民生活に死活的な影響があるとして集団的自衛権を行使すべきだとしている。集団的自衛権を行使することで、紛争中でも自衛隊が他の国と共同して機雷などを除去できるようにすべきであるとした。そして国連の平和維持活動や多国籍軍などの集団安全保障措置やまだ武力攻撃に至ってない、いわゆるグレーゾーンについても憲法解釈を変えることや、新たな法整備を行うことが必要だとしている。

「報告書」は「国民のいのちと暮らしを守るために必要最小限度のものであれば集団自衛権の行使を認めるべきではないか」という考えを述べているが、集団的自衛権行使できなければ国民のいのちと暮らしを守れないという論証がない。

「報告書」をまとめた「安保法制懇」は外交や安全保障の専門家といわれるが、安倍首相自ら設置したもので、集団的自衛権行使容認が前提にあり、結論は最初から決まっていたのだ。

この「報告書」は、国の針り、戦後日本の安全保障政策の大転換を企図している。

安倍首相は「戦後レジ―ムからの脱却」と称して、日本の戦争責任とその歴史認識と、自ら「外敵」をつくり出し、アジア諸国の警戒感と無用な対立を醸成させてきた。昨年十一月には「国家安全保障会法」、十に「特秘密保護法」の制定強行。その後、「国家安全保障戦略」、「新防衛大綱」、「中期防衛力整備計画」を閣議決定し、四月には「武器輸出三原則」の撤廃と解禁を閣議決定した。

日米同盟を強化し、抑止力を高めるためにも集団的自衛権の行使容認が重要だとする安倍首相、戦後培ってきた平和国家を否定し「戦争ができる国」へ日本を改造するために、これまでの憲法解釈を変えることによってその実現を目指している。これは断じて認めることはできない。

安倍首相の施策は矛盾を深め、アベノミクスの幻想は綻びはじめている。これに対して、「戦人委員会」など、解釈改憲集団的自衛権行使容認に反対する新たな運動がはじめられている。護憲勢力の真価が今まさに問われている。

全労協は、憲法解釈を変更して集団的自衛権を行使ようとする安倍政権に対して、全力を挙げて対決していく決意である。



(F)