12/6 日弁連 特定秘密保護法の採決強行に抗議する会長声明




特定秘密保護法の採決強行に抗議する会長声明  


本日、参議院本会議において特定秘密保護法案の採決が強行され、特定秘密保護法が成立した。


同法は、国民の知る権利を侵害し、国民主権を形骸化するものである。衆議院における4党修正案によっても、官僚が恣意的に特定秘密を指定する危険性を除去する実効的な方策は規定されておらず、その危険性は何ら変わっていない。そのため、同法案に対しては、報道、研究、映画界等様々な分野から廃案を求める意見が出されてきたところである。


ところが、国会で審議が開始されてからも、衆議院においては、政府側からの答弁に不一致や変遷が起きるなどして審議が混乱し、みんなの党及び日本維新の会からの修正案を取り入れた4党修正案についてもわずか数時間の審議で採決がなされてしまった。参議院では、衆議院で検討が不足していた論点について、十分な検討がなされるべきであったが、参考人や公述人の多くが反対意見や問題点を指摘する意見を述べたにもかかわらず、これらの意見についても十分に検討がなされないまま、短時間の審議で採決が強行された。これは、およそ重要法案の審議とはいえず、国会の存在意義を自ら否定するに等しい。


よって、同法案の採決を強行したことは、内容面・手続面いずれにおいても国民主権・民主主義の理念を踏みにじるものであり、到底容認されるものではない。この点について強く抗議する。


当連合会では、民主主義社会の根幹である国民の知る権利や報道の自由の侵害、重罰化、適性評価によるプライバシー侵害のおそれをはじめとした様々な問題点が残されている同法について、引き続きこれらの問題点の克服のための活動を行っていく所存である。あわせて、国民主権確立のために不可欠な情報公開制度・公文書管理制度の改正、特定秘密保護法の有無にかかわりなく整備されるべき秘密指定の適正化のための制度策定に向け全力を尽くし続けることを誓うものである。


2013年(平成25年)12月6日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司






特定秘密保護法案について改めて廃案を求める会長声明  


特定秘密保護法案に関連して、自由民主党石破茂幹事長が、自身のブログで、議員会館付近での同法案に反対する宣伝活動に対して、「絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と述べたことにつき、厳しい批判の声が上がり、その後、記事の撤回と謝罪がなされたことなどが大きく報道された。


テロとはまったく異質な市民の表現行為をとらえて、テロと本質が同じであると発言したことについては、当連合会としても、表現の自由を侵害するもので許されないと考える。


特定秘密保護法案においては、第12条2項で「テロリズム」の定義が記載されている。これに対しては、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する行為がそれ自体でテロリズムに該当すると解釈されるのではないかとの疑義が示され、問題であると指摘されている。


この点について、政府は、「人を殺傷する」などの活動に至る目的としての規定であるとし、石破幹事長も説明を修正したが、政権与党の幹事長が、上記のような発言をしたことは、その後発言が修正されたとはいえ、市民の表現行為が強要と評価され、直ちにテロリズムに該当すると解釈されることもありうるという危険性を如実に示したものということができる。


特定秘密保護法案については、その危険性を懸念する声が日に日に増しており、マスコミ各社の世論調査などによってもそのことが明らかとなっている。それにもかかわらず、衆議院では法案の採決が強行され、その拙速な審議が強く批判されている。このような状況において、やむにやまれず法案への反対を訴える市民の行動をとらえて、政権与党の責任者が、市民の宣伝活動について、テロ行為と本質が変わらない、主義主張を強要すればテロとなり得るなどと発言することは、甚だ不適切であり、特定秘密保護法が成立した場合に、表現の自由やその他の基本的人権を侵害するような運用がなされるのではないかとの危惧をますます大きなものにしたといわざるを得ない。


このようなテロリズムの解釈の問題については、国会審議でも疑念が指摘されたが、政府は条文の修正をしようとしない。この法案については、秘密の範囲が広範であいまいであり、秘密の指定が恣意的になされかねないこと、それをチェックすべき第三者機関の設置が先送りされたままであること、報道の自由をはじめとする表現の自由に対する萎縮効果があることなどの問題点が指摘されており、これに加えて、テロの定義が広がり、国民の正当な政府批判までが取締りの対象になる危険性が明らかになったのであって、このような問題点が払拭されないまま、この法案を成立させることは許されないというべきである。


よって、当連合会は、人権侵害のおそれがより明らかになった特定秘密保護法案について改めて廃案を求める。


 2013年(平成25年)12月3日

  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司



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