労働組合の闘いで安心できる社会を  全労協新聞 2013年4月号 1面から


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原発のない福島県民大集会に参加(3月23日)


労働組合の闘いで安心できる社会を
賃上げ効果は無く、生活を圧迫するアベノミクス
安倍政権の解雇規制の一層の緩和は許されない


春闘の賃金相場に影響力を持つとされる電機連合自動車総連金属労協と、交通、情報関係の産業などで三月十三日・十四日に13春闘の集中回答があった。

自動車各社は満額回答、業績悪化がいわれる電気でも、一時金で格差があるものの定昇が維持された。

もともと経営側は13春闘を前にして、「一年前に比べさらに経営環境は悪化」と強調し、「企業の存続と従業員の雇用の維持・安定を最優先する」と主張していた。従ってベアを「協議する余地はない」、定昇についても「時期の延期や凍結について協議せざるを得ない場合もあり得る。聖域にすべきでない」とし、企業業績に変動があった場合は「賞与・一時金で反映させる」と主張していた。

安倍政権は、「アベノミクス」による円安、空前の株価高騰、二%インフレ目標でデフレ脱却を目指して経済界に賃上げを求めていたが、この結果は「賃金引き上げの余力はない」としていた経営側の主張が根拠のないものであることを明らかにした。

しかし組合側はベアを求めておらず、企業側は景気の先行き不透明を理由にベアを見送った。定期昇給はこれまでのところ、すべての企業が維持すると回答し、一時金も業績の改善を受けて去年を上回る金額を回答する企業が相次いだが定昇維持は賃上げではない。一部大手小売業界で賃上げが行われたものの、正規社員に限定されていて、非正規雇用に言及されていない。二%インフレ目標の労働者収入を上げるならば、最低賃金こそ上げるべきだ。

厚労省平成二四年版労働経済の分析(労働経済白書)でも、「非正規の常雇が増加し、家計を支える非正規雇用者も増加する中、その家計は余裕がなく結婚や子どもの数などにも影響」を及ぼしている。「国内需要の大きな割合を占める家計消費を押し下げている最大の要因は所得の低下である。近年において、マクロ的には必ずしも労働生産性の上昇に見合った所得の増加がみられていない。こうした所得の増加がみられていない要因としては、主に非正規雇用者の増加によるものであり、また、非正規雇用者の増加が低所得者層の増加」につながっていると報告されている。今後これに続く中小企業で働く労働者、パートや派遣・契約社員などの非正規労働者の闘いがある。「アベノミクス」に賃上げ効果は無く、物価高騰など労働者の生活を圧迫してくる。

労働政策では、政府の「経済財政諮問会議」の民間議員がまとめた提言は「退職に関するマネジメントのあり方について総合的な観点から整理すべきだ」だと指摘し、会社員の退職制度や正規・非正規労働のあり方など労働市場の総合改革を検討するよう求め、六月に策定する「骨太方針」に反映させるとされている。また、総合規制改革会議の雇用の項目では「労働者の解雇規制の緩和を目指す。これまでの企業による解雇は、裁判で無効と判断されれば職場復帰で救済していたが、労使が金銭給付で解決することを 認める仕組みを検討する」と伝えられている。これまでも企業側は「解雇規制が厳しいことが、企業の採用意欲をそいでいる」と主張してきた。日本では派遣切りが横行し、雇用調整は派遣労働者期間従業員など、いわゆる非正規労働力が中心であったが、これは解雇規制の一層の緩和で容易に正社員をリストラできる思惑にほかならない。安心して働き生活できる社会の実現は労働組合の責務だ。

春闘はまだ終わってはいない、闘いはこれからだ。



(F)