9/14 厚労省 「平成24年版労働経済の分析」を公表

 



平成24年9月14日
政策統括官付労働政策担当参事官室
 雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長(併) 労働政策担当参事官室 中井 雅之(7851)
 労働経済調査官 山田  航 (7733)
 室長補佐 尾崎 美弥子(7729)
(代表電話) 03(5253)1111
(直通電話) 03(3502)6726

報道関係者各位

 

平成24年労働経済の分析」を公表

~分厚い中間層の復活に向けた課題~


 
 厚生労働省は、本日の閣議で「平成24年労働経済の分析」(通称「労働経済白書」)を報告しましたので、公表します。
 「労働経済白書」は、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について、統計データを活用して経済学的に分析する報告書で、今回で64冊目になります。
 平成24年版は、「分厚い中間層の復活に向けた課題」と題し、自ら働いて人間らしい生活を営むことができる「分厚い中間層」の復活が、日本経済の需要面では所得増、消費増を通じた需要不足の解消に、供給面では経済社会、社会保障を支える基盤強化につながるという観点から分析しています。
 白書は3章構成で、それぞれ次の内容を中心に分析しています。
・第1章「労働経済の推移と特徴」:震災や円高による雇用・労働面への影響
・第2章「貧困・格差の現状と分厚い中間層の復活に向けた課題」:非正規雇用者の増加などが消費をはじめとする需要に与える影響
・第3章「就労促進に向けた労働市場の需給面及び質面の課題」:就業率の向上や生産性を高めるための能力開発などの課題

 

【白書のあらまし】

○主な分析のポイント
・2011年の非正規雇用者比率は35.1%。一方で、非正社員を正社員に登用する企業も増え、企業の意識面からは非正規雇用者の増加傾向には変化の兆し。(概要p7)
・バブル以降の所得の伸び率の鈍化が、消費の伸び率鈍化の最大の要因。世帯年収は、年収が低い層に分布がシフトしているが、消費を最も期待できる中所得者層の増加が潜在需要の顕在化のためにも重要。(概要p9,10)
・非正規雇用者でも、約半数が自らの収入を主な収入源として生活する社会となる中、これらの労働者が、一定水準以上の生活を送ることができる社会を目指すべき。(概要p10)
○まとめ
「分厚い中間層」の復活に向けては、1.誰もが持続的に働ける全員参加型社会の構築、2.能力開発による人的資本の蓄積、3.ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現が不可欠。
 概要は、別添の通りです。
 


 


【経済】

賃上げで経済活性化を 労働経済白書

 
 厚生労働省は十四日、二〇一二年版の労働経済白書を発表した。コスト削減のため企業が非正規労働者を増やした結果、低所得世帯の割合が上昇したと指摘。賃金を引き上げて「中間層」を増やすことで個人消費の拡大を促し経済を活性化させるべきだと訴えた。非正規労働者の正社員化を進めることも提言。人への投資を増やすよう企業に求めた。
 白書の副題は「分厚い中間層の復活に向けた課題」。白書によると、単身世帯で年収三百万~六百万円、二人以上世帯で五百万~一千万円の中所得世帯の割合は二〇〇九年に48・1%と、一九九九年より2・9ポイント低下。一方、年収がこれより少ない低所得世帯は〇九年で34・1%と、8・6ポイントも上昇した。
 白書は「年収分布が低い方へ移っている」と警告。所得減の要因に非正規労働者の増加を挙げ、人件費削減が消費の伸び悩みを招き、成長の足を引っ張った可能性があると指摘した。
 企業は貯蓄が投資を上回るカネ余り状態だが、利益が株主への配当金などに回され、賃上げや人材育成に十分活用されていないと批判。「人件費を消費の源泉ととらえ、(働く人への)分配を増やすことが経済活性化に重要」と強調し、分厚い中間層の復活が必要と訴えた。
 正社員を希望する非正規労働者を三百五十五万人程度とし、全員を正社員に登用した場合、所得を約十兆円、家計の消費支出を約六兆三千億円押し上げる効果が見込めるとの試算結果を示した。
 非正規労働者の約半数は、主要な稼ぎ手として家計を支えていることから「非正規でも一定水準以上の生活ができる社会を目指すべきだ」と指摘し、待遇改善を急ぐべきだと主張した。


 
3.社説 京都新聞



労働経済白書  中間層拡大の道筋示せ

 厚生労働省が発表した2012年版の労働経済白書は、中間層の拡大を目標に掲げている。
 日本の社会や経済の基盤を形づくってきた中間層がやせ細っているのは間違いない。
 非正規労働者や、働く貧困層が増えたためで、低所得世帯の増加により国内の消費が低迷したとの指摘はうなずける。
 中間層を厚くすることで個人消費の拡大を促し、経済を活性化させるべきだとの主張も分かるが、どうやって中間層を拡大させるのか。白書には具体的な道筋が示されていない。
 利益が出ても内部留保に走るなど企業側に責任があるのは当然だが、国の責任や役割にほとんどふれていない。不満が残る内容といわざるを得ない。
 副題は「分厚い中間層の復活に向けた課題」。野田佳彦首相が所信表明の時以来、掲げる政策の命題とリンクした形となっている。
 白書によると、09年時点での中所得世帯の割合は48・1%で10年前より2・9ポイント低下。一方、低所得世帯は34・1%と8・6ポイントも上昇した。年収分布が低い方へ移っている、と警告する。
 要因として非正規労働者の増加を挙げる。人件費削減が消費の伸び悩みを招き、成長の足を引っ張っている、との見立てだ。
 確かに企業はカネ余り状態でも利益を内部留保や株主への配当金に回し、賃上げや人材育成に十分活用してこなかった。
 人件費はコストであるだけでなく、消費の源泉であり、働く人への分配を増やすべきだ-。企業に「人への投資」を増やすよう求めているのは理解できる。とはいえ円高など企業を取り巻く厳しい環境を考えると容易ではない。
 企業は求められている社会的責任を果たす。国は政策で支える。役割を踏まえ、両者が一体となってこそ実現が可能のはずだが、白書では具体策が見えない。
 賃上げを含め、安定した雇用を確保するには成長戦略との連動も欠かせないが、先ごろまとまった政府の「日本再生戦略」は新味に乏しいうえ、財源が不透明だ。
 そもそも、非正規労働者が増えた最大の要因は小泉政権以降、政府が労働法制の規制緩和を続けたからではないか。来月施行の改正労働者派遣法にしても、製造業への派遣の原則禁止は削除されるなど名ばかりの改正にすぎない。
 中間層増大の前提として貧困対策があることも問題を難しくさせている。いかに底上げを図るか。利益の再配分や仕事を分かち合うワークシェアリングなど働き方、雇用はどうあるべきか、政労使で知恵を出し合う必要がある。
 
[京都新聞 2012年09月26日掲載]


 
(F)