命と生活を脅かすコロナ・失業・過酷労働・ハラスメントとの闘いを! / 全労協新聞 2021年4月号

命と生活を脅かすコロナ・失業・過酷労働・ハラスメントとの闘いを! 全労協新聞 2021年4月号 

 


 
私たちの命と生活を脅かすのはコロナだけではない
失業・過酷労働・ハラスメントとの闘いを!


全国労働組合連絡協議会 議長 渡邉 洋

 

 大勢の労働者がコロナ失業に苦しんでいる。その一方では、連日、長時間労働パワハラによる労災事件が報道されている。三月十二日に三菱電機社員の自殺の労災認定、十三日に厚労省職員の超長時間労働が明らかとなり、十四日に東芝、十六日にソニーでの過労死労災認定などが相次いで報道された。

 総務・農水官僚の接待漬けが連日国会で追及されているが、行政の腐敗は裾野にも広がる。労働者を守るべき歴代山形労基署長が使用者側から接待を受けていたことが十六日に報道された。過労死、過労自殺パワハラや組織の不正に起因する悲劇を根絶するための取り組みは、労働組合自らが担わなければならない。


働き方改革」は掛け声倒れか?

 

 「働き方改革」は掛け声倒れか?
 働き方改革関連法は二〇一八年六月に成立し、十九年四月から施行されている。さらに遡れば、十五年十二月の電通新入社員の自殺が長時間労働の実態を告発し、労基法改正の動きを後押しした。パワハラ防止に関わる改正労動施策総合推進法は十九年五月に成立し、昨年六月以降順次施行されている。

 今回労災認定となった事件を振り返る。長時間労働が原因のソニー社員の突然死は十八年一月に発生(認定は今年二月)、東芝は十九年十一月(認定は昨年十二月)、実に働き方改革関連法施行後だ。パワハラによる三菱電機社員自死は十九年七月に発生(認定は今年二月)、やはり法改正後だ。

 法改正直後とはいえ、社会的な議論はその前からあり、法案審議も各企業は知っていたはずだ。もっと言えば、個々で名前の挙がっている企業は、いずれも日本を代表する大企業、若しくはその系列下、コンプライアンスを問われる存在だ。言い訳は許されない。


公務職場でも過労死水準常態化


 コロナ対策を担う西村経済再生相の下で働く秘書官が、相次いで体調を崩して交代したことが報じられた。背景には、ほとんど休日なしでコロナ対策に明け暮れた過酷労働、加えて大臣からのパワハラがあったとされる。

 感染症対策に直接携わる厚生労働省では、一月に八十時間以上の超過勤務のあった職員が三九八人、最高は二二六時間だった。労基法週用外の職場であり、コロナ感染拡大という重大な時期とは言え、超過勤務は職員の命に関わる水準であり看過できない。

 過酷労働の実態は地方自治体にも及んでいる。保健所職員、保健所業務を支援する応援職員、各種給付金審査業務、宿泊療養施設の運営等々、平時には発生しない業務が職員を追い詰める。そしてもちろん、医療関係、介護関係職員はその最前線に立っている。

 経営効率至上主義の合理化が今日の事態を招いたことは明らかだ。公務公共サービスのあるべき姿を、労働組合が示し闘い取っていかなければならない。


廃炉過酷労働と公文書改ざんの残酷

 

 二〇一一年三月十一日の福島原発事故以降、今曰まで連日廃炉作業が続けられているが、放射線被曝という危険に加えて、過酷な労働環境の中での長時間労働が過労死を含む労災を生み出している。二〇一七年十月に職場で突然死レた猪狩忠昭さんの死亡原因は明らかに長時間労働にあったが、労災認定までには約一年(申請後七ヵ月余)を要した。未払残業代訴訟は、昨年三月に原告勝訴が確足している。
 さらに遺族は、会社、元請、東電を被告とする損害賠償請求の栽判を起こし、長時間労働を放置した使用者側の責任を追及している。判決はこの三月末となっている。

 財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが森友学園に関わる文書改ざんを上司から強要されたことを苦にして自殺したのは二〇一八年三月、今から三年前だ(その後労災認定)。赤木さんの遺族を原告とする裁判は昨年三月に提訴されたが、国会では森友事件は過去のこととする与党側の対応が続いている。
 この二つの事件では、国策が大きく関わって人の命が奪われた。感染拡大の渦中にあっても、決して埋没させてはならない。

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