労働者切り捨てを許さない! / 全労協新聞 2020年8月号

労働者切り捨てを許さない! / 全労協新聞 2020年8月号

 


 

命がけの奮闘の末の労働者切り捨てを許さない!


全国労働組合連絡協議会 

議長 渡邉 洋


 COVID-19は日本国内でも感染拡大が再加速している。感染対策か経済かという究極の選択を迫られ、社会は混乱を深めている。差別と偏見が拡大し、感染拡大の「犯人」探しが横行している。

 

 感染対策に貢献してきた医療労働者の処遇は、病院の経営悪化によってさらに引き下げられ、明日への希望を閉ざされつつある。その一方で、景気対策としてのGoToトラペルキャンペーンが、多くの反対をよそに強引に進められている。

 

 こうして今、この国の持つ病理が明らかになろうとしている。その多くは政権に由来するが、市民社会に由来するものもある。このままでは社会そのものが崩壊する。その危機感を職場の仲間と共有し、労働組合としての取り組みを確立し進めていこう。


問われているのは市民社会でもある

 

 安倍政権下の施策は、全国一斉の休校要請、特別措置法の成立、緊急事態宣言、オリ・パラ延期、フリーランス対策、持続化給付金、アベノマスク配布、「スティホーム」首相動画の配信、一律十万円給付を巡る政策の混乱、GoToトラベルヘと続いた。これらの中には、政府か世論に押されて渋々実行したものもある。揺れ動く市民感情はもう一方で、自粛ポリス、すなわち密告と排除の論理をはびこらせた。

 

 これらの政策、政策決定に至る混乱について、当然賛否両論がある。批判を挙げてみよう。首相の政治的野望=改憲への地ならし、緊急事態宣言なんていらなかった、いやもっと強制力のある対策が必要だった、お友だち企業の優遇、政策決定が遅すぎて救えたはずの命か奪われた、「やってる感」演出のパフォーマンス、金銭的保障はまったく不十分等々。どれも当然の批判だ。ただ、あえて言えば、別の政権であってもある程度混乱はあっただろうし、市民目らが拡大させた混乱もある。しかし今、どうしても看過できない事態が進行している。


過酷労働の末に切り捨てられる医療労働者

 

 患者の救命、感染拡大防止に奮闘してきた病院の経営が悪化し、文宇どおり命かけで、身を挺して従事してきた医療労働者の処遇に深刻な影響を及ぼしている。夏季一時金の減額、全額カットが相次いで提示された。看護師らの大量退職が起こっている。病院の倒産もあり得ないことではない。感染対策に力を注げば注ぐほど、正当な評価をされることなく、組織も労働者も、その末来は閉ざされてしまうのだ。そもそも医療、危機管理は市場経済に馴染まない。

 

 「かんばりが報われる」というかけ声には能力至上主義の危険性かつきまとうが、現実はそれすら否定されている。がんばった末に切り捨てられるのがこの社会の真の姿であることを、今次感染拡大は白日の下にさらけ出した。


リモートワークの陰で進行するものは?


 安倍政権が進めてきた「働き方改革」は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を標榜する。コロナ感染拡大は、「新しい生活様式」なる造語を生み出し、多様で柔軟な働き方のひとつである、リモートワークの一定程度の定着をもたらしつつある。

 

 これらの形態が今後も定着し、新しい可能性を切り開くことは否定しない。しかし、繰り返すが、社会全体の危機の最前線で奮闘してきた労働者が、まったく評価されすに切り捨てられる。これがこの国の本質だ。

 

 対策は不可能ではない。不要不急の政策に投下される税金、例えば辺野古基地建設費を回す。そしてなによりも、社会全体の崩壊を食い止めるために、大企業がため込んできた四六〇兆円を超える内部留保を引き出させる。

 

 政策変更を迫りきる闘いを、職場から作り出そう。