労働者保護に風穴をあける法改正にNO! / 全労協新聞 2020年4月号

労働者保護に風穴をあける法改正にNO! / 全労協新聞 2020年4月号

 


 

 

 

高齢者雇用安定法改正

労働者保護に風穴をあける法改正にNO!

 

今国会で「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」を含む雇用保険法等の一部を改正する一括法案が出ている。三月十一日に衆院厚労委員会審議が始まり、十九日には衆院通過、三月中の成立を狙っている。この法案は六つの法案を束ねているが、一部に予算関連があり、日切れ法案(三月中の成立が必要)とされている。複数法案を一括にし、十分な審議を保障しないのは、安倍政権の常套手段だ。

 

高年法改定ポイントは、現行の「六五歳までの雇用機会の確保の義務化」を「七〇歳までの雇用・就業機会の確保の努力義務化(のちに義務化)」とすること。問題は、その措置として定年延長、六五歳以上の雇用継続、定年の廃止に加えて、労働契約ではなく業務委託や有償ボランティアでも可としていることだ。選択肢は多数あるように見えるが、企業は雇用責任を取らなくていい業務委託や有償ボランティアの制度を選択するだろう。高齢者は若者に比較して労働災害の発生の率が高いが、雇用でなくなれば、「怪我も自分持ち」になる。

 

さらに問題なのは、労働法の適用を外す手続きを労働法の中に組み込むことだ。安倍政権は雇用によらない働き方の拡大を狙っており、将来六五歳以下の年齢層にも「雇用によらない働き方」を拡げる危険がある。新型コロナの拡大で、業務委託やフリーランスで働く人たちが契約を解除され仕事を失い、政府は対策として貸付を言っている。この事実からも「雇用の安定」には程遠いことが明らかだ。

 

法案審議を前に三月四日、労働弁護団主催「高齢者の働き方『業務委託で』でいいの!高年法改正の問題点を斬る」院内集会が六十人余の参加で開催された。

 

労働弁護団闘争本部長の棗弁護士が上記にあげた問題点を解説した上、現行の六五歳までの継続雇用でも、収入が四分の一となる条件に、暮らしていけないと拒否したら雇用終了となり、裁判しても労働者の権利は認められない現状を紹介した。石橋通宏議員、尾辻かな子議員(立憲)、宮本徹議員(共産)、昨年野党共闘で当選した芳賀道也議員が参加挨拶した。

 

三月十八日昼には衆院厚労委員会の採決が予定され、雇用共同アクションは緊急に衆議院第二議員会館前の抗議行動を実施四十人余が参加、全労協からは渡邉議長が挨拶を行った。政府は十分な審議も行わないまま、三月三十一日には参院本会議にて採決・成立を行おうとしている。雇用共同アクションは参院段階でも抗議行動に取り組むことにしている。

 

全労協常任幹事 柚木康子)

 

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