全労協/ パワハラ指針案 パブリックコメント / 新聞 2020年2月号

全労協パワハラ指針案 パブリックコメント / 新聞 2020年2月号

 

1.十二月二十日まで募集されているパブリックコメントについて、真摯に検討し、その内容を指針に反映することを求めます。

 

2.パワーハラスメントにより、心身に変調をきたし命を落とすこともある実態を踏まえて「はじめに」の項に全てのハラスメントは相手に対する人権侵害であり、行ってはならないことを明記すること。

 

3.「優越的な関係を背景とした」言動

 

指針案は、「優越的な関係」を「抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係」と狭く解釈していますが、職務上の地位や人間関係、専門知識など何等かの事由による優位性を背景としたパワハラが実際に起きています。国会の附帯決議は、同僚や部下からのハラスメント行為も対象であることを周知すべきとし、裁判ではそれらについて使用者責任や環境整備義務違反が認められている例もあります。「優越的な関係」は、様々な要因から生じた人間関係を広く含む概念であることを明記すべきです。

 

4.「職場」の定義

 

指針案は、「職場」を、業務を遂行する場所で、通常就業している場所以外でも業務遂行する場所は「職場」に含まれるとしています。しかし、パワハラは、通常の職場や出張先等業務を遂行する場所だけでなく、終業後の懇親会や電話、メールなど様々な場所や手段でも行われていることを明記すること。

 

5.「労働者」の定義

 

指針案では、「労働者」を、事業主が雇用する労働者に限定していますが、他の事業主が雇用する労働者、就活生やフリーランス個人事業主も対象とすべきです。

 

6.代表的な言動の類型

 

繰返し、「客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲委で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」と言う文言が記載されています。JR西日本の福知山の列車事故や郵政職場では「みせしめ」と言える指導が行われ、死者を出しています。「業務上必要かつ相当な範囲委で行われる適正な業務指示や指導」の名のもとに長年行われている実態に対応できる指針にすべきです。パワハラに該当しない例を列挙することは、それらにお墨付きを与え、パワハラを助長する危惧もあり、削除すべきです。

 

7.事業主が行うことが望ましい取組み「パワハラの相談窓口がセクハラ等の相談窓口と一体的一元的体制を整備すること」

 

セクハラは被害者の大多数が女性です。妊娠、出産等に関するハラスメントは女性が対象です。特にセクハラ被害を受けた女性には、精神的な負担が大き過ぎるため、パワハラとは異なる専門的知識が必要で、同等には対処できません。別の相談窓口を設置することが必要です。

 

8.事業主が併せて講ずべき措置「プライバシーの保護」

 

性的指向性自認に関するハラスメント及び性的指向性自認の望まぬ暴露であるいわゆるアウティングについて、指針案では、六類型の「精神的な攻撃」に該当する一例に「性的指向性自認に関する侮辱的な言動」、「個の侵害」に該当する一例に「性的指向性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」が記載されています。

 

事業主が併せて講ずべき措置には「なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれる」と記載されていますが、これは「なお書き」です。性的指向性自認に関するハラスメント及びアウティング等はパワハラとしてプライバシー保護も含め、雇用管理上の措置の対象となることを明確にすべきです。

 

9.雇用労働者以外の者に対して行うことが望ましい取組み

 

事業主が講ずべき措置の望ましい取組みでは「個人事業主インターンシップを行っている者等の労働者以外の者に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮する」にとどめています。「必要な注意」ではなく、事業主が講ずべき雇用管理上の措置として記載すべきです。

 

また、「他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者及び労働者以外の者」に対する言動については、パワハラを行ってはならない旨の「方針を併せて示すことが望ましい」とし、これらの者からパワハラの相談があった場合は、「必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい」としています。「望ましい」ではなく、事業主が講ずべき雇用管理上の措置として記載すべきです。

 

10.「仕事の世界における暴力とハラスメントに関するILO条約」の批准に向けて

 

参議院の附帯決議では、「19国内外におけるあらゆるハラスメントの根絶に向けて、第一〇八回ILO総会において仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約・勧告が採択されることを支持するとともに、条約成立後は批准に向けて検討を行うこと」と明記されています。日本が速やかにILO一九○号条約を批准するためにも、附帯決議を踏まえた実効性ある指針にするよう求めます。